さすらいの旅人

ニューオーダーのさすらいの旅人のレビュー・感想・評価

ニューオーダー(2020年製作の映画)
3.7
★死者だけが戦争の終わりを見た
【VOD/WOWOWオンデマンド/配信視聴/シネスコサイズ】

絶望的な映画だ。
ウクライナ前の映画だが、現代社会の理不尽さと暴力による支配への批判は予言を含めて明確だ。

不穏の中で行われるセレブたちの甘美な結婚式。新婦のマリアンは幸福の絶頂だった。それを襲ったのは緑をスローガンにした群衆。彼らは貧富の差に怒り狂るい、セレブに対して殺戮と略奪を繰り返す。この辺の静から動への映画としてのテンポの切り替えが秀逸だ。群衆からの難を逃れたマリアンには安堵の暇はなく次の試練が待っている。何たる悲劇の映画だろう。

この映画はマリアンの緊張感ある脱出映画であるが、そこにアクションやサスペンスを期待してはいけない。その後の展開が言葉では言い表せないくらい悲惨な映画だからだ。映画の世界を通じて理不尽な事件が多発する現代社会への警鐘だろう。この映画には正義は存在しないし、夢や希望もない。

本作は映画としては非常に後味の悪い作品だ。オープニングに意味不明な抽象的な絵画が登場するが、この絵画がこの映画の象徴と意味合いを示しているのが面白い。このオシャレ感はフランス資本が一部入っているせいかも知れない。