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夏への扉 ―キミのいる未来へ―のトルーパーcomのレビュー・感想・評価

2.0

#夏への扉
古典SF小説を日本版で映画化+猫映画。
今年6月公開時に劇場で観賞したのですが、レンタル開始されてたのでレビューしてみます。

公開初週にイオンシネマ板橋で観ました。
自分が観た回は割と客入り良かったけれど、興収的には失敗だった様子。

緊急事態宣言明けた直後で時期も悪かったのもありますが、ポスターなど宣伝が作品イメージと合ってなかった印象もある。原作知らない限りSF映画だとわからないのでは。


■ストーリー
時代設定が1995年と2025年の日本に変更されているだけで、概ね原作小説準拠。

自身の研究内容を奪おうとする人物に裏切りにより冷凍睡眠に入れられ、30年後に目覚めてしまった主人公の科学者。
裏切者への復讐とヒロイン救出のため、タイムマシンを使って未来から元の時代へ戻り...的な話。

冒頭95年が舞台なので、今アラフォーくらいの人には懐かしい要素もあるのでは。
キャスト(を目当てに観に来る客層)を考えると時代設定は2005年&2035年くらいの方が良かったような気もします。


■原作小説
原作はロバート・A・ハインラインのSF小説『夏への扉』
タイムトラベルものの古典的名作で、バック・トゥ・ザ・フューチャーの元ネタの1つでもある。

自分もたしか中学生くらいの時に読みました。
今回の実写映画化タイミングでパラパラと読んでみたけど、ストーリーは8割方原作ベースという感じ。


<以下、ネタバレあり感想>



■キャラクター

◆高倉宗一郎(山﨑賢人)
原作のダン。90年代の学生だなあっていう衣装は割と良かった。

これから何をしようとしてます/今何を考えてます/今僕は何に気付きました、ってのをモノローグ的に全部セリフにしてしゃべり続ける演技が不自然すぎた。
鬼滅の刃の炭治郎ばりに、ひたすら内心をしゃべり続けます。

割とシンプルなストーリーなので、そんなことしなくても話は十二分に理解できるし、
彼がひたすらプロットや伏線を言葉でしゃべり続けるので、原作を知らずとも次の展開がすべて予測できすぎてしまい何も驚きがない。

これは俳優のせいではない気もするけれど、観客をバカにしてるのかな?って感じてしまった。
客層を中学生くらいに設定してるのだろうか。それにしては時代設定を90年代にしているし、よくわからない。


◆松下璃子(清原果耶)
原作のリッキィ。
「おかえりモネ」主演でブレイク中、さらに人気も増していくであろう彼女が十代のうちに撮影したのは良かったと思います。
演者が若々しくてスクリーン映えするので、主人公の行動の動機に説得力があるように感じられる効果はあったと思う。とにかくキラキラしていた。

物語の節目節目となる重要シーンで、ちょっとやりすぎなくらい彼女の顔がアップになるので、彼女のファンなら嬉しい映画なんだろうなと思った。


◆ピート(藤木直人)
アンドロイド。『エイリアン』シリーズのアンドロイドを思わせるような風貌としゃべり方。
こういう古典的なキャラ造形は、今の時代に見るとクラシカルな伝統芸みたいな印象で、これはこれでアリだなと思った。


◆その他キャスト
夏菜:底意地の悪そうな表情が秀逸。ある意味90年代ぽい
原田泰造:いい人すぎてペラいキャラクター
田口トモロヲ:登場が唐突すぎて微妙
猫:かわいい


■時代演出
・1995年
90年代日本の世界観は割としっかり再現されていて、衣裳も美術も良かった。
ミスチルのクロスロードをウォークマンで聴くっていうシチュエーションもベタで良いと思う。

ただ、これだけベタなフリをしておいて、クライマックスでクロスロードが流れないのは謎。マジで謎。
いちばんベタでアガるシーンで、どう考えてもミスチルがくるであろうシーンで流れる曲はLisaの新曲『サプライズ』というサプライズ。

は?え???
鬼滅ばりに主人公が内心をしゃべり続ける作品であることを補強する演出なのかこれは。
「きーみとならー、見ーたい未来ー♪」と熱唱するLisaの歌声が劇場に響き渡ってるけど、この展開は観客が観たい未来じゃなかったんですが...

『CROSS ROAD』はうまく演出すれば歌詞もこの話に合うように見せることもできると思うので、それっぽく歌詞の字幕出したりすれば効果的にできたのにね。

プロモーションとかいろいろ大人の事情あるんだろうけども、だったら彼女にクロスロードを歌わせたらよかったのでは。


・2025年
我々観客からするとたったの4年後なのにあまりにも未来すぎてリアリティがない。
あと4年でこんなに進化しないだろっていうのも問題だし、その進んだ未来のビジュアルも、白一色で古典的な未来感。

原作が古典小説なのでこういう感じにしたのかもしれないけれど、2021年にこのビジュアルのSF映画をやる意義とは。

もともと95年に冷凍睡眠技術があるのがおかしいので、現実世界の延長で考えてはいけないのかもしれないけれど、いろいろと違和感ばかりの未来描写だった。

邦画にしてはそこそこ未来描写に予算はかけている感じはしたので、ここで驚きの何かが見せられれば、映画の評価もグッと上がったかもしれないと思うと残念です。


【スコア】
★2.0で。

清原果耶目当て、もしくはとにかく猫が観たいっていうならまあ、って感じです。
SFなのに映像的新しさはないので、SF好きにはオススメできないかも。

ストーリーは無難だけど、演出が前述したクドさなので、正直観ていて「早く終わらないかな」って思っちゃいました。ごめんなさい
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