モモモ

スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバースのモモモのレビュー・感想・評価

4.1
職人達のアート博覧会、再び。
まあ、前作がトンデモない完成度でしたから「続編の理想系」が飛び出してきても驚きは無いですよね。
やっぱり2部作分割の前編じゃねーか!!と内心思いつつ、本作だけで「物語」にはキチンと始末を付けているので隙が無いですね。
その「物語」とは本作の事実上の主人公「グウェン・ステイシー」の事である。
映画が始まった時の「語り部」が彼女である時点で明白ですが、本作はグウェンの物語である。
前作で掘り下げる余裕がなかった「彼女はスパイダーウーマンになり何を失ったのか」を描き、恐怖と向かい合わせ、和解し、運命など変えられるとの(3作目にも連なる)気付きを得て、自分の場所を築くまでの物語。
「会いたいけど会いえないし何て言えばいいか分かんないし」なマイルズとの恋模様がね、最高です。
マイルズの部屋に自分の上着忘れたり、マイルズの上着着て出て行ったりね、10代の恋愛あまずっぺーーー!ですよ。
同時進行するのは「マイルズ・モラリスというスパイダーマンに対する反応」のメタファー物語。
黒人のスパイダーマンなんて…と言う当時の反応を「お前は異分子なんだ」との上手い後付け(上手すぎるので前作時点で決めていた気がしてしまうが)を「マルチバース」と言う本作の主題に絡めて描く。
失ってこそスパイダーマン、耐えてこそスパイダーマン、孤独でこそスパイダーマン。
長い長い歴史と、度重なる映像化の果てに「本当にそうだろうか?」とスパイダーマンと言う概念を問う物語。
その着地点がね…「アメコミ映画の王道」を再度提示してくれて痺れてしまいましたね。ここに関してはエンパイア・ストライクバック方式なんで、まだまだ評価の真髄は先になりそうですが。
終盤のあのツイスト、怖くて良かったなぁ。
「そうだよね、なんか背景アートの雰囲気が違うもんね」という本作特有の違和感が完璧に機能していた。
グウェンの世界の原典コミックを模した水彩画的背景も良かったし、編集というか、コンテ力がね。冒頭のバンドから去るグウェンのシーンとか。観ていて気持ちいいの何の。
早くもう1回観たいなぁ!
こんな高クオリティな脚本、画力のアニメが1億ドルで作れるなんて…職人技の究極系ですよ。
いやぁ、素晴らしいものを観させて貰いました。
次回作も座して待ちます!!
モモモ

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