シンタロー

風速七十五米(メートル)のシンタローのレビュー・感想・評価

風速七十五米(メートル)(1963年製作の映画)
3.3
田中重雄監督×宇津井健&田宮二郎主演の大映スペクタクル。新聞記者の田村は、東京の防災対策に警鐘を鳴らしている熱血漢。田村の大学時代の友人・丸山照子の父が社長を務める丸高組が入札、施工した巨大ネオン塔が銀座に完成。点灯披露パーティーの夜、設計士の山口と現場監督の浅沼は、何者かに銃撃され、ネオン塔を爆破される事件に遭遇する。田村は、入札時のライバル会社・名古屋の遠藤組が陰で糸を引いているのではないかと疑うが、確証はない。ネオン塔の修理工事を進める中、照子は田村と共に仲の良かった大学時代の友人・木谷と、7年ぶりに再会する。田村も呼び出して、3人は久々に酒を呑み交わす。木谷は、暁産業という万屋で常務をしているというが…。
本作の4年前に起きた伊勢湾台風は、まさに風速75メートル規模で、明治以降の自然災害では、95年の阪神淡路大震災まで、最大の犠牲者数でした。その4年後にこのような娯楽作品が作られるなんて…オープニングでは実際の伊勢湾台風の映像まで使用…現代では不謹慎と叩かれそうです。この頃の特撮映画あるあるだけど、クライマックスを期待させるところが、楽しみでもあり、じれったい。このドラマパートがくだらないと、耐えられず早送り、なんてことになります。
本作は、スター俳優3人の友情と、三角関係のもつれが同時進行で描かれますが、ツッコミどころ満載なので、退屈はしませんでした。複雑な過去、立場があり、葛藤する木谷は唯一丁寧に描かれている感じ。アホ過ぎるヒロインは、いかにも世間知らずなお嬢さんで、父亡き後は失策を連発して、まさに人災。熱血漢な田村ですが、言動はブレブレで肝心な時に役立たず。まるで狂言回しな立ち位置で、かっこよくない。ご都合主義で、無理のあるつじつま合わせを感じますが、比較的テンポ良く、無事クライマックス?銀座を未曾有の台風が襲いかかるミニチュア特撮シーン!有楽町の日劇や朝日新聞社、ペコちゃんの看板等々、崩壊しまくる映像はなかなか見応えあります。いかにもこの時代の大映B級映画っぽく、それなりに楽しめました。
後に大映ドラマでも大活躍した宇津井健は、新東宝倒産後移籍してきました。はっきり言って芝居は大根だと思います。しかもこの頃太ってるのか?ずんぐりむっくりのまん丸顔で汗かきまくり。対する田宮二郎がスタイル抜群なだけに、お気の毒な感じです。田宮に関しては、本作はハマり役で言うことなし。単なるワルでなく、バックボーンがあり、そこを芝居でもうまく表現されてます。アクションもキレキレで、カッコいい。ヒロインは叶順子。作品によっては?ってビジュアルでしたが、今回はまずまず。ポスト若尾文子の代表的存在でしたけど、眼の病気でこれがラスト作品。残念だけど、大映ではこれ以上の待遇は難しそうだったし、良かったのではないかと思います。
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