kuu

FLEE フリーのkuuのレビュー・感想・評価

FLEE フリー(2021年製作の映画)
3.6
『FLEE フリー』
原題 Flee.
映倫区分 G
製作年 2021年。上映時間 89分。
20年の時を経て祖国アフガニスタンからの脱出を語る青年アミンの姿をとらえたデンマーク・スウェーデン・ノルウェー・フランス合作ドキュメンタリー。
主人公をはじめ、周辺の人々の安全を守るためにアニメーション製作された。
監督は自身も迫害から逃れるためにロシアを離れたユダヤ系移民であるヨナス・ポヘール・ラスムセン。

父が当局に連行されたまま戻ることがなかったアミンは、残された家族とともに生まれ育ったアフガニスタンから脱出した。
やがて家族とも離れ離れとなったアミンは、数年後たった1人でデンマークへと亡命する。
30代半ばとなり、研究者として成功を収め、恋人の男性と結婚を果たそうとしていたアミンだったが、彼には恋人にも話していない20年以上も心に抱え続けていた秘密があった。
親友である映画監督の前で、アミンは自身の過酷な半生を静かに語り始める。

シンプルかつショッキングなストーリーが、驚くほどよく描かれていました。
しかも、これまで経験したことのないような(少なくとも記憶にない)方法で語られている。
それはとても理にかなっていると云える。
ドキュメンタリーの標準的な手順てのは、参加者や専門家がカメラに向かって彼らの視点を語ること。
これは試行錯誤の結果であり、人々に自分の物語を語ってもらうことに真の力があるからやと思う。
それは感覚を持った生物にとって基本的なことであり、人間としての特徴の1つでもある。
しかし、この語り口は、そこにいるちゅう感覚を人に与えないかもしれない。
アニメーションは、驚くべきことに、これを実現する能力を持ってました。
なぜなら、出来事は厳密かつ荒々しいディテールで再現されるからです。
また、キャラは、描かれているからといって、人間的でなくなることはない。
アニメが何でも子供向けとして扱われる時代はとうに過ぎているのやろな。
アフガニスタンからロシアへ。
ロシアからコペンハーゲンへ。
コペンハーゲンからプリンストンへ、そしてまた戻ってくる。
観てる側は、しばしば命がけで走り続ける遊牧民アミンを追いかける。
今作品は本質的に政治的なものではないが、しかし、難民のためのケースを作る。
勝手な認識ではありますが、映画好きは共感能力に長けていると思うので、説得する必要がない。『難民が経験することは本当に酷ぇことやし、少しでも国が助けられることをすべきや』と。
でも、そのメッセージを聞いて理解する必要がある人はたくさんいる。
その人たちが今作品を見る機会はあるんかな。
とは云え、小生は少し偽善的かもしれません。
母国での紛争からの逃亡に加え、アミンは自分にはできない何かを乗り越えようとしている。
彼は敬虔なイスラム教徒の国から来た同性愛者であり、この2つのことは本質的に混ざり合わない。
にもかかわらず、このドキュメンタリーは『LGBTQ』映画ではない。
そして、この問題がどのように解決されたのか、ちょっと唖然とした。
解決という言葉が正しいかどうか。
kuu

kuu