アニメ映画でありながらドキュメンタリーであるため、すごくリアルでアニメの非現実感が感じられないほど生に満ちた作品だった。
彼がフランスの強制収容所で描いたイラスト集『Campos de Concentracion 1939-1943』の抜粋が何枚も映し出されるシーンでは、彼の叫びを届けられる喜びと戦禍の絶望が伝わる。
映画の語り手は、ジュゼップと強制収容所の中で出会った憲兵の視点である。その当時に、国や文化も違うはずの2人が友情を育んだことは容易ではなかったはずだ。その友情の間にもジュゼップの絵が潤滑油となったと思う。芸術によって歴史が語られるのはとても素敵なことだと思った。
作中では、フランス人憲兵によって収容所のスペイン人が酷い差別を受けるシーンが多々ある。飢餓や暴力に苦しむ姿はもちろん、憲兵に小便をかけられるシーンまで。さらに、フランス人憲兵の中にいる黒人憲兵達がレジスタンスとなりフランス人憲兵を殺害するなど。ただ一つの幸せすら感じられない当時の様子に、言いようのない虚しさを感じた。「火垂るの墓」や「言の葉の庭」のようにリアルすぎる戦争アニメだった。