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アナザーラウンドのytのレビュー・感想・評価

アナザーラウンド(2020年製作の映画)
4.1
第93回アカデミー賞で国際長編映画賞と監督賞にノミネート、見事に前者を受賞。他にも第78回ゴールデングローブ賞、第74回の英国アカデミー賞と様々な映画賞を席巻したデンマーク、オランダ、スウェーデンのコメディドラマ映画。主演はマッツ・ミケルセン。アルコールを巡る仮説の証明のために人生が色濃くなる中年男たちの運命を描く。

[あらすじ]
→冴えない高校教師のマーティンと同僚3人。とある哲学者の”血中アルコール濃度を一定に保つと仕事の効率が良くなり想像力がみなぎる”という仮説を証明するため、実験をすることに。徐々に効果が出る一方で、行動には結果が付き物で……。

[レビュー]
・本作は型通りの日常に対する喪失感とアルコールを上手く掛け合わせた作品だ。序盤でマーティンらは見慣れた日常に虚無感を覚える。身の入らない授業、妻や子とのすれ違い。そんな日々に彩りを与えたのは、”アルコール”であった。だが、終盤で裏切られたのもアルコール。本作は、ヒューマンドラマという作品の筋に、アルコールのメリットとデメリットを添えるような形で作り上げている。ラストシーンは誰しもがお酒に対する魅力を感じるシーンで、20歳でない自分ですらお酒を飲みたいと感じてしまう作品だった。

・作品を通しても分かるように、アルコールの摂取量を間違えると人は変わっていってしまう、というのは世界共通なのだと分かる。デンマークが日本よりも遥かに若い年齢から飲酒可能なのには驚いたが。マッツ・ミケルセンの色気も相まって、我々も作品に酔ってしまいそう。

・北欧の作品ということもあり、かなり風景や家、一つ一つの行動がお洒落である。お酒を扱う作品のため、そのような場面にもこだわったシーンは多かった。だが、かえってそのシーンが無駄に感じるシーンも多い。摂取し始めてからの疾走感にブレーキがかかることもしばしば。

👉監督であるトマス・ヴィンダーベアは、当初マーティンの娘役に自身の娘であるイーダを起用しようとしていた。だがイーダは撮影開始から四日後自転車事故で帰らぬ人に。イーダから聞いた若者の飲酒文化の話を踏まえつつ、ヴィンダーベアは飲酒だけでなく人生にも目覚めることが出来るような作品を作ったという。そんな監督の渾身の籠った力作はヨーロッパの代表作となった。
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