kuu

アナザーラウンドのkuuのレビュー・感想・評価

アナザーラウンド(2020年製作の映画)
3.7
『アナザーラウンド』
原題 Druk.
映倫区分 PG12.
製作年 2020年。上映時間 115分。

デンマークを代表する人気実力派俳優のマッツ・ミケルセンが、トマス・ビンターベア監督と再タッグを組んだ主演作。
トマス・ボー・ラーセンやラース・ランゼらがマーティンとともに実験を行う同僚教師を演じた。脚本にトビアス・リンホルム。

冴えない高校教師のマーティンと3人の同僚は、ノルウェー人の哲学者が提唱した
『血中アルコール濃度を一定に保つと仕事の効率が良くなり想像力がみなぎる』
ちゅう理論を証明するため、実験をすることに。
朝から酒を飲み続け、常に酔った状態を保つと授業も楽しくなり、生き生きとするマーティンたち。生徒たちとの関係も良好になり、人生は良い方向に向かっていくと思われた。
しかし、実験が進むにつれて次第に制御がきかなくなり。。。

ハードロック・メタルロックバンドの“北欧の至宝”と云えば個人的にはプリティ・メイズか、DIZZY MIZZ LIZZYに決めかねるけど、
俳優さんにおいては、マッツ・ミケルセンが断トツかな、そのミッツ・マングローブじゃやい、マッツ・ミケルセン主演の作品でした。
人生てのはゲームやと云ったギャンブラーを小生は知ってる。
そう云う見方なら、科学というより芸術かな。
今作品は、この考えをアルコリズムと見事に結びつけてました。
ある日、あなたは世界の頂点に立つ。
教え方も上手くなり、ついに家族との絆も取り戻した。
そして、どうやってそこに来たのか、なぜそこにいるのか、ほとんどわからないまま、近所の家の玄関先で血まみれになってしまう。
ヴィンターバーグの2012年の長編映画『偽りなき者』と同様、今作品でもマッツ・ミケルセンが主演を務めている。
その映画とは異なり、彼は自分が犯してもいない犯罪について町中の魔女狩りの中心にいるわけではない。
その代わり、主人公マーティンは平凡な人生を送る平凡な歴史教師である。
しかし、彼の人生は一転する。
彼は鬱病で、抜け殻のような男になっていた。
家族とのつながりもなく、生徒たちとも距離を置くマーティンは、人生をのんびりと漂っているように見える。
10分という短い時間の後、彼と彼の友人たちは、退屈な人生を変える時が来たと決心する。
彼らは、物事にスパイスを加えようと、低いとはいえ一定の血中アルコール濃度を維持することを試み始める。
突然、人生が良くなった。
外向的で、エネルギッシュで、人と接するのが苦にならない。
しか~しっ、これはすぐに破綻する。 
アルコールは、それに頼れば頼るほど、機能するために必要になってくる。
耐性増加やね。
趣味が習慣になり、習慣が中毒になり、制御不能に陥る。
人のメカニズムはそういうもの。油断した瞬間に、その油断を見計らい、腹に一発お見舞いしてくれる。
まさに、魔は虎視眈々と人の心に忍び寄り、人は魔が差す。
今作品は、この考えを完璧に表現している。
しかし、今作品を高く評価しているわけではない。
壁を跳ね返すようなエネルギーと同時に、のんきな態度がにじみ出ていて、それが伝染してしまった。
問題は、それがかなり鼻につくということ。
今作品には、観客に微妙に情報を伝える大きな説明部分がある。
登場人物たちは、時間の経過とともに感じる影響について「エッセイ」を通じて自分自身を監視しているん。
そんため、今映画は自分自身を説明する余地を与えてくれる。
問題は、それがどこにも行かないということです。
多くの小さなことがあちこちにあるように。
各キャラクターは、果たすべき微妙な役割を与えられているようで、そのアイデアから軸足を移すことはほとんどない。
そのため、最初から予想がつかない展開になっています。
前提条件から今作品の行く末を想像したのなら、おそらくその通りだろう。
しかし、今作品の見返りはほとんどなく、残念な結果となってしまってる。
『偽りなき者』の第3幕のトラウマになりそうな展開とは大違いかな。
しかし、映画をチェックすることは決して悪くないとも思います。家でゆっくりできる2時間があれば、今作品の再生ボタンを押して頂きたいかな。
まぁ面白いし、確かなメッセージを伝えてくれるし、かなり巧みな演技を魅せてくれる。
しかし、もし見る人が、力強いメッセージや満足のいく結末で、自身を打ちのめすものを探しているなら、この作品にはそれがないかな。
考える通りの場所に構築され、釘がすでにその場所に埋め込まれているにもかかわらず、頭上に釘を打つ。
今作品は、トーマス・ヴィンターベアが、ウィーンのブルク劇場で働いていたときに書いた戯曲をもとに作られたそうです。
さらに、ヴィンターベアの実の娘(アイダ)が、デンマークの若者たちの飲酒文化について話していたことから、インスピレーションを得たそうです。
アイダはもともとヴィンターベリにこの劇の映画化を願い、マーティン(マッツ・ミケルセン)の娘役を演じる予定であったそうっすよ。
当初は
『酒がなければ世界史は変わっていたというテーゼに基づく酒の祭典』
てのがストーリーで、ヴィンターベリによれば
『もっと怒った映画』やったそうだ。
しかし、撮影4日目にアイダが交通事故で亡くなってしまう。
この悲劇を受け、ヴィンターバーグは映画製作を中止し、生きんのをやめようとまで考えたと述べてます。
しかし、最終的に彼は、より人生を肯定するような脚本に作り直すことを決意し、
『ただ酒を飲むだけではいけない。人生に目覚めるということが必要やった』とヴィンターベアは述べている。
共同脚本のトビアス・リンドホルムは、事故後の1週間、監督を務めた。
今作品はアイダに捧げられたもので、一部は彼女のクラスメートと一緒に彼女の教室で撮影されたそうです。
そんなこんなを踏まえて悪くない作品でしたし、誉めたり貶したりしてますが面白かったっす。
kuu

kuu