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Summer of 85のtsuraのレビュー・感想・評価

Summer of 85(2020年製作の映画)
4.0
お気に入りの監督のひとり、フランソワ・オゾン監督が満を持して、監督を志した頃からの念願の企画エイダン・チェンバーズ著「おれの墓場で踊れ」の映画化。

恋に恋したあの頃。 
全てが新しくて眩しくて新鮮で。
そして、青春にある深い傷跡に気怠かった一瞬の夏。

感情的になりやすい若さ故の脆さをこの作品は見事に成就した初恋の熱情で説く。

主人公アレックスは夏のある日、セーリングで沖を出るが急の荒天に見舞われ転覆。
その直後にダヴィドという青年に救出される。
彼の自由で何にもブレない性格、加えて端正な容姿にアレックスの中で、芽生えた事のない感情が横溢。
次第に互いに何かを感じあい…転覆した時の嵐よりも凄まじい恋が始まる。

この一瞬、一瞬の情景。
見事にカメラに収めている。
ここにはオゾン監督の思い入れが随所で感じられる。
「夏のノルマンディー」これだけでもそそるのに、80'sなファッションに、煌めくディスコの調子、海の青。

監督が歩んできた人生の面影すら感じとれるその青春の辛さとその甘酸っぱさを鮮明にエネルギッシュに。
それを主演の2人フェリックス・ルフェーブルとバンジャミン・ヴォワザンは見事に体現。ホントに雷鳴みたく瞬く閃光みたく映画を刺激的にしている。
(個人的にはアレックス演じるフェリックス・ルフェーブルには恋してしまいそうでしたが)


恋の辛さが爆発した後半部の描写は心を掻き乱す程にセンチメンタル。

でももっとドラマチックに、もっとドラスティックでもよかったかもしれない。
炸裂する恋慕はもはや、過呼吸寸前だったろうから。故に墓の前で踊らないと抑えきれない感情に自身が潰れてしまいそうだったのは容易なんだけど。
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