がんびーの

ザ・ファイブ・ブラッズのがんびーののレビュー・感想・評価

ザ・ファイブ・ブラッズ(2020年製作の映画)
4.0
スパイク・リー監督の行動力の高さを感じる一本。
いつくらいから撮影してたのかはわからないけど、配信のタイミングが色々とタイムリーで感動。今だからこそ観るべき戦争映画なのではないだろうか。

1955ー1975にかけて起こったベトナム戦争(ベトナム現地ではアメリカ戦争って言われてるらしい)で共に戦った5人の黒人、通称ファイブ・ブラッヅ。惜しくも、5人の中でリーダー格であったノーマンは戦死してしまう。時が経ち再び再開した4人は、ノーマンの死体回収と当時発見した金魂を探しにベトナムへと戻るのであった…。

ベトナム戦争が勃発した時期に、ちょうどアメリカでは公民権運動が行われていた。かのキング牧師もベトナム戦争への反対を訴え、その一年後に射殺されてしまう。アメリカ人口の約10%が黒人だが、ベトナム兵における黒人の割合は約30%にも上ったという。国に尽くすことで人権の自由を与えられると信じたアフリカ系アメリカ人の多くが、戦地で無残な死迎えてしまったのだ。いかにベトナム戦争と人種差別が親密な関係だったかが理解できる数字である。

仮に無事アメリカに帰還できたとしても、国からの待遇は変わらず、むしろ母子殺しと言われ煙たがれる始末。PTSDに陥り、家族を愛せず、鮮烈な戦争の記憶に毎晩うなされ続ける。

変わらない人種差別。ベトナムでの最悪な体験。
すべてが彼らを蝕み、”あの日々”から逃さない。

「戦争は一生続く」とはまさにこのこと。

ベトナム戦争という切り口から、人種差別問題へとつなげていく。
決して二つの事柄は別物ではない。それらが表裏一体となりアメリカの影を作っている。そしてそれは現在も続いている。

本作品を鑑賞する前に、もしくはした後に、「地獄の黙示録」を鑑賞することをお勧めします。
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