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TITANE/チタンのkuuのレビュー・感想・評価

TITANE/チタン(2021年製作の映画)
3.9
『TITANE/チタン』
原題 Titane.
製作年 2021年。上映時間 108分。
映倫区分 R15+.
『RAW 少女のめざめ』で、結構、鮮烈なデビューを飾ったフランスのジュリア・デュクルノー監督の長編第2作。
頭にチタンを埋め込まれた主人公がたどる数奇な運命を描きいたフランス・ベルギー合作品。
ヴィンセント役にバンサン・ランドン。

幼少時に交通事故に遭い、頭蓋骨にチタンプレートを埋め込まれたアレクシア。
それ以来、彼女は車に対して異常なほどの執着心を抱き、危険な衝動に駆られるようになってしまう。
自身の犯した罪により行き場を失ったアレクシアは、消防士ヴィンセントと出会う。
ヴィンセントは10年前に息子が行方不明となり、現在はひとり孤独に暮らしていた。
2人は奇妙な共同生活を始めるが、アレクシアの体には重大な秘密があった。

個人的にはですが、今作品には退屈な瞬間がなく、たとえテンポが悪くても、映像と演技が常に魅力的で、引き込まれるように観終わりました。
このダークな寓話は、絶望、怒り、疎外感、嫌悪感、欲望、保護、愛など、あらゆる感情に触れることができ、母性ちゅう感情の全領域を経験することに一歩近づくことさえできる。
登場人物の誰一人として好きになれないのに、美しい欠点や原始的な本能を持った生(き)の人間として共感してしまう。
ジュリア・デュクルノー監督は、多くの言葉(セリフ)をまったく必要とせずに、人間の経験を詩的に伝えるという点で、イングマール・ベルイマン(スウェーデンの映画監督、脚本家、舞台演出家)やミケランジェロ・アントニオーニ(イタリアの映画監督)を思い起こす能力を持っている。
今作品は明らかに万人向けの映画とは云えないまでも、多くの視聴者に忘れられない体験に感じられるはずかな。
ジュリア・デュクルノー監督の今作品は、2001年の『ガーゴイル』、2008年の『マーターズ』、2019年の『CLIMAX クライマックス』みたいなフランスの新過激派ムーブメントの作品と云えるかな。
映画『クライマックス』は結構、好き嫌いが分かれる作品同様に、今作品は、良くも悪くも視聴者が自己満足のまま、生の感情や手つかずの残虐性を思い出させてくれるものです。
アガト・ルセルが演じるショーガールのアレクシアは、幼少時の交通事故により、
頭蓋骨にチタン板を入れられ、→殺人願望があり、→自動車に絶望的なまでに興奮する。
どないなモノにも興奮を覚える人がいるように、彼女は自動車に興奮する。
(少なくともその自動車を運転している男性の心の中で)
アレクシアはまた、明らかにアンドロジナス(既存の典型的な男らしさや女らしさに当てはまらず、それらの両方の特徴を混ぜ合わせて併せ持っていたり、そのどちらでもなかったり、その間の特徴を持っていたりすること)な外見をしているため、『男の尺度』のヴァンサン・ランドンが演じる地元の消防士を、彼女が実は彼の失踪した息子アドリアンであると騙すことができる。
それにもかかわらず、彼女は最近の車での交尾で明らかに妊娠しており、奇妙な子供についての芸術映画としては、個人的にはA24の『LAMB/ラム』より僅差でよかったかな。
前述の『クライマックス』と同様、今作品がいかに深く動揺させるかに感心した(こんなことがまだ可能だと思うほど、まぁまぁホラー映画を見てきた者として)。
また、『籠の中の乙女』(2010)のフィナーレを思わせる公衆トイレのシーンがあるなど、同じように効果的な映画を思い起こさせられた。
拷問ポルノと切り捨てるのは簡単なことやけど、最も血なまぐさいシーンでさえ、ある種の芸術性があった。
たとえば、アレクシアがスツールで男を殺り、疲れ切ってしばらくその上に座っているシーンのフレーミングのような。
セックスとアイデンティティに関する思慮深い、不穏な考察もある。
単なる暴力描写にとどまらず、今作品の内容は他のホラー映画よりも深いレベルで感動させてくれたし、時折、魅惑的な嫌悪感で画面を凝視することもあった。
今作品は、巧みに作り込まれた映画(撮影、視覚効果、その他もろもろ)であり、単にもだえたり、うわっっつ!って思うような映画よりもずっと長く心に残るものだと思います。
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