むっしゅたいやき

The Three-Sided Mirror(英題)のむっしゅたいやきのレビュー・感想・評価

The Three-Sided Mirror(英題)(1927年製作の映画)
4.0
此方もジャン・エプシュタイン監督作品。
『Le Tempestaire』と同じく、La Cinémathèque françaiseのVOD、「HENRI」にて。
この二作は、米国にてDVD化もされているそうです。
原題は『La Glace à trois faces(三面鏡)』。

恐らく本作は、人を選ぶ作品だと感じます。
文学で言えば説話に基を取っていない芥川で、センシティブな文面ではあるけれどその内容は非常に私的。
本作も謎と余韻が残るばかりで有るので、藪の中が近しいかと思います。

物語は或る青年の恋愛模様…と言っても青年は客体で、主体は彼を愛した三人の女性となります。
パール、アゼリア、ルイーズの三人へ見せた彼の三つの顔が、タイトルに準えています。
モンタージュが多用されており、各女性の思い出が演じられるのですが、青年が誰を愛したのかは、語られぬまま物語は終わります。
ルネ・フェルテの能面の様な顔が、愛車を運転し寄り道をしている際、心底気楽で楽しそうに見えたのが物悲しさを募らせます。

原作のポール・モランドの短編小説では、本作の青年の友人の口述、と言った体で展開しますが、本作ではこの友人の存在は抹消され、青年の存在は女性達の記憶を基に描写されています。
この為、青年との思い出の中の彼の笑顔が本当に存在したのか、と云う疑問が湧きます。

彼が本当に誰を愛したのか、頭を悩まされる作品です(VODの作品説明で、モロにネタバレされていますが…)。
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