芽

恋する寄生虫の芽のネタバレレビュー・内容・結末

恋する寄生虫(2021年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

「その虫は『恋』に寄生する」

ええ待って…?めちゃくちゃ好きだったのに評価低くてびっくり。でも確かに話は割と幻想的でボヤっとしてるから、ハマらない人にはハマらないんだろうなと思う。
溺れるナイフと系統は似てるかもなと思った。

最初「虫に寄生されている」類の話は全て医者たちの妄想の話なのかなって思ってたけど、そうではなく本当に「フタゴムシ」に寄生されてる2人の話で、自分は社会に適応できない生きていても無駄な存在だ、と思ってすらいたのに、それが全部虫のせいだったなんて。「虫のせいに出来たら楽なのに」と本来なら願いたいくらいなのに、本当に虫のせいとは。面白い。
互いに惹かれ合うのも虫のせい。お互いの嫌な部分(潔癖症、視線恐怖症)が和らぐのも虫のせい。全部虫にコントロールされ、生きてきた2人は、この恋心ですら虫のせいだと思いたくはなく、この気持ちだけは本物であると信じたかった。私も0.01%だけでも本物の恋心があると信じたい。でも最後のシーンも、卵がお互いの体の中に残った状態だから、手術をした後も惹かれあったままなのだろう、と非常に残酷な気分になった。

湖の中に入り、小松菜奈ちゃんが
「君の中から私が消えてしまうのだけはイヤだ」と泣きながら言うシーン。
ここが一番好き。他人の視線が怖く、人と関わることが出来なかった女の子が、その人を好きになり、この気持ちが虫のせいだと分かっても、手術をして自分の事を好きだったという気持ちを心の中から消えて欲しくないと懇願している姿に涙が出た。

この映画は主役2人の非常に整った顔と、美しい映像、又それに反する奇妙な寄生虫、心地よい音楽、全てが合わさってひとつの芸術作品が出来上がっていた。
非常にアンニュイで、少しでも触れてしまえば粉々に壊れてしまう。そんな儚さも纏っていた。

2024.21
芽