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Salt of This Sea(英題)のshunのレビュー・感想・評価

Salt of This Sea(英題)(2008年製作の映画)
3.8
パレスチナにルーツを持つブルックリン育ちの女性がイスラエルを訪れる。

アラブの名前と祖父の出身地と見た目からまずは空港で足止めされる。

旅の先で出会ったEmadは彼女がなぜ「ユダヤ人の友達に会いに来た」と言わないのか?と聞く。そういえば入国審査も楽なんだろう。真実は自分を苦しめることになるだけ。
でもこの主人公は結構こだわりがあって真実を語ることは諦めないと言う。正直ここは彼の方に共感した。
話が通じるような相手ではないし偏見だけで決めつけてくるような人たちは相手するだけ無駄だと思う。自分が誰であるかは自分自身や近しい人が知っていればいい。

少し話が違うかもしれないけど日本の江戸時代の踏み絵のこととかも「なんで踏むだけ踏んで隠れて信仰しないんだろう?」と歴史の授業で扱われる度に思っていた。自分自身キリスト教徒だけど、そもそも幕府の役人が用意した踏み絵に神の存在を感じることもないし、だから踏んだら助かると言われたら喜んで踏む。信仰なんて結局個人のもので、祈りだって自分さえいればできる。そう思ってしまうのだけど、やはりそう簡単にいくわけではないという人がいるのも分からなくはない。

運転中に急に軍に車を止められ服を脱がされても「心配しないで、これが普通だから」と言うEmed。この前観た検問所を舞台にした短編映画でもそうだったけどこんな酷いことが日常的に行われているのは異常だと思う。ちなみにその短編の主人公の俳優さんはEmed役の人でした。

今作ではパレスチナ人を差別しない登場人物も出てくる。おそらく彼女はユダヤ教徒なんだけど主人公の祖父が住んでいた家の今の住人。まあ複雑だよなあ。彼女は一切悪気がなくてそもそも両親から受け継いだ家だし、主人公に対しても「いたいだけここに住んでいいのよ」と声をかける。それでもここは自分の家だと主張し暴れる主人公。自分が彼女の立場だったらどうしてたかすごく考えた。
新しい住人も一部の上層部が悪いのだと言っていたけど、実際イスラエルに行ってそこに住む人たちはこの問題をどう捉えているのか聞いてみたい。映像と音楽も綺麗だった。
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