ちびねこ

空白のちびねこのレビュー・感想・評価

空白(2021年製作の映画)
4.0
最初に課題を出されてしまう。
①花音は万引きをしたのか、しようとしたのか、していないのか?
②青柳は花音に何かをしたのか、しようとしたのか、していないのか?
正解が描かれていないので、ここは観る方それぞれの捉え方になってしまいます。

スピード違反を理由にパトカーから追跡を受け逃走していた乗用車が、他の走行していた自動車に衝突し、その車に乗っていた女性が怪我をしたという事件がありました。
その女性からパトカーの追跡は行き過ぎだったと訴えられましたが、裁判所は違法では無いと訴えを退けました。
逃げた花音を青柳が執ように追いかけたとしたらどうなのか?
映画を観ている限り、青柳は性犯罪を犯す人間には全く見えない。
花音はというととても大人しそうで、担任からも説教されて家では常に威圧的な父親に萎縮してしまっている。
スーパーの化粧品売り場で何となく手にしたマニキュアを“ふっ”とポケットに入れてしまった…かも、知れない。
たかが万引きごときと思うかもだけど、あんな個人スーパーでは小さな金額だってその損失は大きい。

車を運転する以上、いつでも殺人犯になり得る事を心に止めておかなければいけない。
まさに今回のように、花音を最初に轢いてしまった女性。
自責の念に駆られ自殺してしまう。
その後に完全に轢き殺してしまったであろうトレーラーの運転手はその後は全く出て来ない。
葬儀に向う添田。
何を今更と思う。
母と共に謝りに来た時の添田の態度が全ての原因だとは思わないけど、もちろん添田の父親としての気持ちは分からなくも無いけど、誰彼構わず怒りをぶつける事は許される事なのか。
いや、確かにそれは悲痛な叫びなんだけど。
この時の緑の台詞には圧巻。
また、自分を責める被害者を作ってしまった。
他にも花音の担任の今井も胸を痛めている。

結局、最初に出された課題が解けない以上は、だれもが被害者であって誰もが加害者になってしまう。
久し振りにとても重く考えさせられた作品でした。
ちびねこ

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