よっくる

ドント・ルック・アップのよっくるのレビュー・感想・評価

ドント・ルック・アップ(2021年製作の映画)
4.8
この作品の秀逸なところは、コミカルに描くことで鑑賞者が「そんなわけないだろ~」とエンタメに消化できるような作りであるところ。これは『JOKER』とも似た構造。
私たちがこの作品に対して「SFかと思ったらコメディだった」だとか「オチがクソだった」だとか「皮肉が効いていた」だとか安っぽいレビューしか残せないのは物語の構造のせいである(敵を増やしていく)。

外側からこれをただの映画として観たときはコメディに見えるが、その実ただの現実の話である。彗星キラーが迫ってくることや実現できんのか怪しいコールドスリープなどを除けば、ほとんどトランプ政権に変わった辺りから世界で起きていることとなんら変わりなかった。
実際、私たちは危機が迫ったときほとんど同じムーブをするのでは?自分たちの姿に対して「コメディだ」「皮肉だ」といつまでゲラゲラと笑っていられるのかな?と私は感じた。

だから重いと感じる人はわりと作品をまっすぐ受け止めていて、引きで観れた人は自分ごと化できていない証拠だ。どっちが悪いとかではないが。

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※この辺からオチに言及します。

オチとしては私は特に不快ではなかったが、あの星でどのように暮らしていくのかが気になった。自分たちのしたことから目を背けて地球から逃げるような人間どもが農耕や狩りなどできるだろうか?だから「ジジババの楽園」にはなり得ず、あれは『地獄楽』みたいなもんである。脱出した人たちの姿を一瞬我々に見せてくれたが、あの後おそらくB級パニックホラーのように次々と食われるか何らかの事故、栄養失調などで死んで終わりだろう。あの星での生活が描かれないのは描く必要がないからでもつまらないからでもなく先がないからである。イーロン・マスク?マーク・ザッカーバーグ?のまがいものおじさん、すごいウザくてキモくてよかったよね(急に馴れ馴れしい)

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ちなみに、ディカプリオは現実世界でも政治にガッツリ介入しているので、一般的な日本人(やや保守的な)からは嫌われるタイプの俳優である。それでも何も知らない日本人とInstagramをフォローしている私のような日本人との評価が割れていないのは彼の俳優としての資質の高さの証明であろう。

にしても、陰謀論者の顕在化と増加が顕著で、本当に恐ろしいと感じる場面が増えた。
「あいつらバカだなあ、猿でもウソだってわかるもの信じるなんて…」って笑ってたらそこそこの大学を出てる人たちもいたオウム真理教なんてのもあったし、バカにしていたら本当に人が亡くなったり地球が滅亡したりするんだよ、意外とマジに。
自分の選択は誰の責任になる?常に選択の連続なのに、きちんと正しい道を選べている?
この世界を「バカだらけ」と舐めていてはいけない。今回この作品で人類が滅亡してしまったのは、愚かな大統領を愚かだと見抜けず当選させた(投票したのは多くの国民=つまり自分たち)ことや必死に訴える科学者をミーム化させてネタとして消費してしまった人類の選択ミスによる。念のためだがアメリカ人のせいではない(爆発された点はアレだけど)。

私は、世界の終末をこの目で見たい。人間が愚かなまま滅びるのか、はたまた正しい選択をして滅びるのか――。
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