MayuShimada

ドント・ルック・アップのMayuShimadaのレビュー・感想・評価

ドント・ルック・アップ(2021年製作の映画)
3.7
最初から最後までずっと皮肉っぽいSFコメディ。
楽しかった。ジェニファー・ローレンスとメリル・ストリープよ。あとバッシュのCEO、レディープレーヤー1ではお茶目でシャイな天才役でしたね。気づいたとき笑っちゃった。天才でシャイなのは共通してるのになんなのよこの差は(笑)

ストーリーの内容も皮肉っぽいけど、キャラクター設定もすごい皮肉だなと思って。もう皮肉しか言えない捻くれた奴が脚本書いたとしか思えない。
好きだけど。
髪は赤いしアイメイクはアナグマみたいなケイト、常識なんかぶっ壊せタイプに見えるけどずっと緊張と恐怖で吐きそうな顔してるし、一番気が弱くて道徳心に溢れてそうなミンディ博士は世界が大変なときにケバい女と楽しく気晴らししてるし。
スピーチは立派だけど頭の中は儲け話でいっぱいな合衆国大統領もいれば、心の平安を確保するサービスを開発、提供しながら冷血なまでに利益を重視するCEOがいたり。
きっとこの映画は、全力で声をあげている、
今見えているものだけが全てじゃないんだぞ!!見たくないものから目を逸らすな!!現実を見極めろ!!
って。

今の世の中にも通ずるところがあるな、って思いました。コロナウイルスに関する陰謀論とか。
それぞれ自分の意見を持つことは大切だし重要なことだけど、意見を持つ前に現在の状況をなるべく正確に把握しないことにはね。現状に対して何か思うわけだから、現状の認識がずれていたら土台からすでに間違った方向に進むことになってしまう。

観ながらずっと、地球を避けていくように軌道をずらすのであれば早めにやらないと、ずらさなきゃいけない角度がどんどん大きくなりませんか?そしてそれに必要な力も大きくなっていきませんか?できるんですか?そんなにのんびり計画練ってていいんですか?ねぇ!って思ってました。
難しいことはわかりませんけど、私の頭の中では彗星が地球に近づけば近づくほど地球が彗星を引っ張る力が加わりそうなイメージだったので、まじで最初からあのCEOの計画には眉をひそめてたよね。
あ、それか、地球に近づいたところで何かしらでうまいことドーンってやれば、遠心力で遠くにぴゅーんと飛んだりしないかな。でももし粉々になっちゃったら破片が地球に降り注ぐことになるよな。それはまずい気がする…。

なんて。いろいろ妄想しちゃうよね。
現代社会を風刺する社会派コメディでもあったし、想像力を刺激する天変地異系SFでもあった。難しくなりすぎなくて良いバランスだったなと思う。
タイトルバックのタイミングが好きすぎた(笑)
え、今wwってなりました。まさに今どうしても下を向かなきゃいけないタイミングで『Don't Look Up』ってね、いや今上向くのむり~言われなくてもむり~って。

結局、世界が危機に瀕したとき助かるのは権力者と金持ちか…と思うと非常に虚しい気持ちでいっぱいになりますな。下々の人間は切り捨てられるために生きているのか?
懸命に働いても裕福な人間がさらに裕福になっていくだけの世界で天変地異なんて起きてほしくないですねぇ。
まぁでも、未知の惑星で未知の生物に頭食いちぎられるよりは、愛する人たちに囲まれて最後の最後まで穏やかに過ごすほうがいいのかな。

最後の晩餐のシーンすごい好きだった。
映像をほとんど停止させるぐらいスローにする演出、穏やかな気持ちがきっと最後まで続いたんだって思えて良かった。ほんの少しの救いでしたね。

いろいろ皮肉ってはいるけど結局ずっとふざけてるから、難しいことは置いておいても楽しめる映画でした。
必死に訴えかける専門家の話は取りあえず真面目に聞いておいたほうが良いな。
MayuShimada

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