Mikiyoshi1986

野獣の青春のMikiyoshi1986のレビュー・感想・評価

野獣の青春(1963年製作の映画)
4.5
追悼・鈴木清順監督

現在公開直前の「LA LA LAND」ではその鮮やかな色彩感覚に影響を受けたとチャゼル監督が公言し、
また「ドライヴ」ではレフン監督が師の印籠を継いだとも云われる清順監督の代表作「東京流れ者」
(そういえばどちらもゴズリングが主演ですね)

我々日本人が思っている以上に清順美学は海と時代を越え、21世紀に入ってもなお若い世代の創作意欲を促進していたんだなぁと、彼を失って改めてその偉大さを痛感している次第です…。

ビビッドな色彩とヤクザフィルムノワールな作風で清順・日活時代の代表作に数えられる「東京流れ者」ですが、
そのプロトタイプと言っても過言ではない清順美学の傑作が「野獣の青春」
事実「東京流れ者」と並んで海外でも人気が高く、個人的にもベスト清順映画はと聞かれたら本作を挙げるかも知れません。

日活を支えた"エースのジョー"こと宍戸錠がヤクザ組織に入り込み、徐々に明らかになっていく彼の狙いと驚愕の事実をハードボイルドタッチに描きます。
さらに天然色が織り成す色彩美はスクリーンを鮮やかに彩り、60年代の日本のポップカルチャーや当時最先端なオシャレさを際立たせます。
夕暮れの時の紫色の空なんかまさしく「LA LA LAND」

またシナリオもキャラクターも音楽も構成もカメラワークもハードボイルドな演出も、どれをとっても素晴らしい出来ですが、
極めて目を見張るのは美術性の高いセットや内装にとことんこだわった空間美。
以降の奇抜さを予感させる、変態になりすぎてない良い塩梅の清順美学が堪能できるものかと。

そして大変不本意ではありますが、彼の死を機に「大正浪漫三部作」と同じくらい日活時代の作品も評価され、そしてこの映像美がBlu-rayなど高画質で残され、後世に伝えられていけばなと思います。

最後に慎んで清順監督のご冥福をお祈りいたします。
Mikiyoshi1986

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