けーすけ

あの頃。のけーすけのレビュー・感想・評価

あの頃。(2021年製作の映画)
3.4
2004年、劔樹人(松坂桃李)はバイトとバンド生活に明け暮れていたが、まったくうまく行かず沈んだ毎日を送っていた。そんなある日、友人から松浦亜弥のDVDを貰い、何気なく見たところ一瞬で心が掴まれてしまった。劔はハロー!プロジェクト好きな友人たちとも出会い、新たな日々が輝き始める・・・





かつて『神聖かまってちゃん』のマネージャーをしていたり、バンド『あらかじめ決められた恋人たちへ』のベースである劔樹人(つるぎ みきと)の自伝的エッセイが映画化。

おそらく2000年代にバンド活動等をしていた人であれば劔氏の名前は見かけた事があるのではなかろうか。僕が知ったのは『ミドリ』というバンドが大阪界隈で一気に知名度を上げていた頃、「ベースの劔樹人がメジャーデビュー直前に突如脱退(失踪)」という話題だったと記憶してます。

まあ、このあたりは本作には関係ないので割愛しますが、エッセイストの犬山紙子さんと結婚して兼業主夫となったり、実の子をあやしていたら誘拐犯と間違えられて通報された事がTwitterでバズるなど、あれこれと活動は面白い人なので興味があれば調べてみてください。




本作では劔が松浦亜弥をきっかけにアイドル(主にハロプロ)にハマり、オタ仲間との交流を中心に描かれます。「ハロプロわからん…」「オタクってなんだか…」と敬遠しそうな人でも見られる内容となっております。
僕もハロプロはメンバーの名前と有名どころの曲しか知りませんが、問題なく楽しめました。


子供の頃にハマったものって大半は一過性で、大人になるまで続くって中々無いと思います。小中高と数年に一度のタイミングで卒業もあり、仲間も離れていくこともしばしば。

でも大人になってからハマったものって突き抜けて楽しくなっちゃう事が多いんですよね。お金に余裕があったらなおさら(本作での劔は基本貧乏ですが)。
さらに自分と同じものに熱中できる仲間が集えばさらに日々は輝きます。

劇中でも「大人になった今、卒業は無い」「中学10年生みたいな集まり」といった表現がされており、ハロプロ大好きな“いい年した野郎ども”を面白おかしく描いておりました。


ただ楽しい時間は永遠ではなく、ゆるやかな環境変化が彼らを変えてもいくのですが、そのあたりの描写もリアリティあって良かったところです。


舞台の大部分が2000年代半ばから後半にかけてなので、iMac、ブラウン管のTV、ガラケー、夏目漱石の旧千円札といった小物や、街中舞台にもひと昔前を感じさせる所でロケをしているようで、あれこれけっこう気を遣ってる印象を受けました。




劔を演じた松坂桃李。ボサっとした髪型でがっつりとアイドルオタっぽい雰囲気になっちゃうのがさすが役者という感じ。左利きなのに通常のベースを弾いてるのは見てて大変そうだったな…。


ネット弁慶で異常にプライドが高くスケベなひねくれものキャラ、コズミンという役に仲野太賀。ほんとにイヤ~な人物になりきっております。脚色もあるのかもしれないけど劇中でも「あいつは悪いやつ」って仲間に言われるって…笑


山中崇、芹澤興人、若葉竜也、コカドケンタロウの面々も良い感じにオタク仲間を演じていましたね。


ただ一部のギャグやボケが、個人的に内輪ネタ見せられてる感を覚えてしまい、少し世界に入り込め無かったのが残念ポイント。長く感じるシーンもあり、上映時間もあと10分くらい短くできたのでは、とも思ってしまいました。


とはいえ、タイトル通りに誰にでもある「あの頃」を思い出させてもらえ、当時の懐かしい感情を思い出させてもらえる映画となっておりました。ハロプロ好きにはおすすめできます。



2021/02/19(金) TOHOシネマズ日比谷 09:20回 スクリーン5 K-13
[2021-022]
けーすけ

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