いずみたつや

ミナリのいずみたつやのレビュー・感想・評価

ミナリ(2020年製作の映画)
4.0
「生きていれば、なんとかなる」とは、『藁にもすがる獣たち』の中でユン・ヨジョンが口にする台詞ですが、それがまさかこの作品と響き合うとは。

ジェイコブ(ヤコブ)が聖書をなぞらえるように数々の試練を課される様子を淡々と、それでいて情感豊かに見せる撮影が見事でした。

信心深い(ほとんど狂信的な)クリスチャンの仕事仲間ポールとの交流は、アメリカの闇に触れるようでとてもスリリング。はじめは彼に侮蔑的な視線を向けるジェイコブも「アメリカンドリーム」という絵空事を妄信していることは皮肉です。

生きていくことの苦難がありありと描写される中で、祖母と孫の心温まるやりとりなど、人情の機微に触れる美しさが胸を打ちます。

私たちは苦しみを味わい続けることで、思わぬきっかけで事態が好転する可能性について目をつぶりがちですが「生きていれば、なんとかなる」。

どんなに過酷な環境でも青く茂るミナリのような生き方に希望を見ることができるのを忘れずにいたいです。