Kana

三島由紀夫vs東大全共闘 50年目の真実のKanaのレビュー・感想・評価

3.5
ドキュメンタリーを始めとする映像作品では市ヶ谷駐屯地での演説と自決が取り上げられやすい三島由紀夫だが、これは自決の一年前に行われた東大全共闘との討論に焦点を当てた作品。
実際の討論の様子を収めた映像や関係者たちの証言から、当時激化していた学生運動、またそれを濃縮したような東大900番教室の熱気がありありと伝えられる100分間だった。

私自身は戦争も知らず、政治に対して関心を抱かなくともそれなりに平和に生きられる時代に生まれ、何が彼らをここまで突き動かしていたのかはきっと一生理解できないように感じる。
また三島由紀夫のことも彼の作品やその死に様からどうしても好きになれず、一体何が人気なのかとずっと疑問に思っていた。

この作品を見てもなお三島由紀夫は好きになれなかったけれど、彼の努力・人柄や、敵陣に一人乗り込むような危険な環境下での相手へのリスペクトを崩さない姿勢、ユーモア、戦後の日本はもちろん死後50年が経った今でも一定の支持を受け続ける理由がよくわかったように思う。

「証言者」となった楯の会や東大全共闘のメンバーの方々も(一部を除き…)フラットな意見を述べられていて、彼らが何を守りたかったのかが"理解できないなりに"少し理解できてとても良かった、今この時代にこそ見て損のない作品です。
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