April01

三島由紀夫vs東大全共闘 50年目の真実のApril01のレビュー・感想・評価

3.6
かなり昔から断片的にはネットに出回ってたから見てた映像。改めて編集でぶつ切りになってはいるものの本作を見ると、安田講堂事件の全共闘トップは地下に潜ったり逮捕されたりで組織内先鋭リアルトップ不在の中ごちゃごちゃした状況下、暫定トップにいた下級生が仕切る学園祭的ノリで行われた討論会、という印象。
三島の頭の中と演台にいる学生代表たちの頭の中がかみ合わず、話が何度も平行線に終始していているのが勿体ない。途中議論に異議を唱えて絡んでくる学生さんの方にむしろ興味をそそられたんだけど、彼に対し赤ちゃん抱いてあえて茶化した演劇スタイルで独壇場の芥という人、恫喝するように出てこいと怒鳴りつける様子は自分のお気に召さない。で彼の現在のお姿も出てくるんだけど若い頃は許せる!でも息巻いて語ってた自由人的芸術家風自意識高い傲慢治らない老人の姿はこういうものかと背筋が寒い気がして申し訳ないけれどいたたまれない感じ。若者の特権てこういうことだよな~と改めて納得。みんなきっと芥さんカッコイイという感想なんだろうけど敢えて異議あり。(自分も今回全体像を見るまでは面白いと単純に肯定してた)まあ祭りにはふさわしいかもだけれど、三島もわかってて大人対応なところが切ない。
司会兼事務方らしく仕切る木村さんの現在の姿と言葉、特に三島と妻が交わした言葉を今頃妻が言い出しまして、とかなんとか涙ぐむあたり堅実に小市民的老人への変貌ぶりが微笑ましく、てらわない実直さが醸し出てて分かり易い。
三島が無防備に自分をさらけ出してそれを言っちゃうか!と思った瞬間は、日本人(アジア人)としての外見にまつわる劣等感のところ。でも案外三島って作品で発揮される耽美で華麗で類まれな文章とは裏腹に平岡公威としてはチグハグな個性を抱えた人でもあったと思うので、大人の余裕を見せつつも正直に語る様子は印象的。
最近のアジアンヘイトやアジアン差別の問題なんか三島にしたら何を今頃騒いでるって笑うはず。アメリカの属国環境に慣れすぎてしまってついには君たち白人のつもりだったのかい?と。やはり若い時はいかに頭良くても理想論、机上の空論になりがちで、ついでに怖いもの知らず。台上の学生たちの溢れる才気と情熱の火花のようなエネルギー、それも含めて若さの特権に真摯にお付き合いする三島を見れる。
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