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北へのCisaraghiのレビュー・感想・評価

北へ(2018年製作の映画)
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サンフランシスコといえばゴールデンゲイトブリッジ、ラゴスと言えばレッキ-イコイー連絡橋。今回ももれなくあの特徴的な斜張橋が映っている。話はそのラゴスから『北へ』。北とは、ラゴスから800㎞以上離れたの内陸北東部のバウチ。後から調べたら、2014年のボコハラム女子高生拉致誘拐事件で拉致された女の子たちが連れていかれたのがバウチらしい。ヤバい所じゃん…。超富裕層の御曹司が、強権的な絶対君主である企業経営者の父親に逆らってNYSC(※)で地方に送られる、というのが発端。

『ライオンハート』のエヌグに続いてナイジェリアの地方の様子が見られたのはよかったけれど、何しろ細部がグズグズなので神が宿ってない、みたいな感じ。でも、基本コメディテイストで明るいし、『ウェディングパーティー』で顔馴染みになったバッシー役のバンキー・ウェリントンさんがいいヤツそうだし、サディークもカワイイし、ナイジェリアの人たちの着てる服が色鮮やかでグラフィカルだし、映るものいちいちが目新しいので、結構楽しく観られた。バンキー・ウェリントンさんは、ナイジェリアのラッパーで、奥様は『ウェディングパーティー』で共演していてこの映画でも脇役で登場しているアデスワ・エトミさん。ナイジェリアでは非常に有名なお二人なんだと思う。

至ってお気楽に観終えたのだが、よく考えたらナイジェリア北東部、女子高というボコハラム女子高生拉致誘拐事件との共通点があり、主人公がそこの女子生徒たちを手助けするという話で、事件への何らかのメッセージが込められているのかもしれない、と後付けで思った。考え過ぎかな?バウチでは2009年7月にも、ボコ・ハラムの襲撃によって50人以上が殺害されているという。

拉致事件の女子高生たちはキリスト教徒だったけれど、こちらではムスリム。陸上をする時もカラフルな原色ユニフォームで頭を含めた全身を被っている。バウチのエミア宮殿のお祭りシーンではカラフルでシックな伝統様式の美術や装束を見ることが出来る。赤土のバウチは大都市ラゴスと違って古い町、郊外には湖やサファリパークがあって麒麟もいる。そこに、非常にオシャレで教育レベルも高い都会人としての一行が観光に行き、その様子をSNSで発信する、というのはアフリカへの無知による先入観を見事に粉砕されるシーンだ。

(※)
NYSCとは、National Youth Service Corps。軍の徴兵のないナイジェリアで、大学及びポリテクニック(高等専門職業教育機関)の卒業生が、1年間国立青少年奉仕プログラムに参加し、国家建設と国の発展に寄与する制度。複数の民族・言語が共存するナイジェリアにおいて、民族や社会的・家族的背景の異なる人々と交流して赴任した現地の文化に理解を深め、国に一体感をもたらすべく、出身地以外の場所へ派遣されるそうだ。主人公バッシーもバウチでは全く現地の言葉を理解出来なかった。
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