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ナイン・デイズのkuuのレビュー・感想・評価

ナイン・デイズ(2020年製作の映画)
3.7
『ナイン・デイズ』
原題 Nine Days.
製作年 2020年。上映時間 124分。
9日間―それは彼らに与えられた“選考期間”孤独な男と魂の交流を描いたファンタジードラマ。
人生の意味を題材にした刺激的かつ優美な映画であり、ウィンストン・デュークの瞠目すべき名演がその出来映えを良いものにしてます。
監督はエジソン・オダ。
インタビューで監督は、今作品に影響を与えた映画として、是枝裕和監督の『ワンダフルライフ』(1998年)、テレンス・マリック監督の『ツリー・オブ・ライフ』(2011年)を挙げてました。

とある孤独な男性は、人々の人生を画面を通して見ていた。
そんなある時、彼の前に、地上で生を受けるためにやってきた魂たちが姿を現す。
男性はやがて、魂たちとの関わりの中で、これまでの人生や自分という存在について考えるようになる。

今作品は、引きこもりの男が、生まれてくるチャンスを求めて人間の魂にインタビューを重ねるというストーリーです。
脚本と監督のエドソン・オダは、このアイデアを、脚本、映像、スコア、演技、そしてただ全体的な考えによって最大限に生かしてます初監督作品にしては驚きでした。
全ては理由があって計画されている。
まず、脚本が巧みでした。
発想がもう面白いし、頭の中に入ってくる感じが最高でした。
個人的に映画などのメディアで考えさせられるものを比較的好みますが、少し偏っているかもしれません。
しかし、ストーリーを超え、それをさらに後押ししているのが台詞でした。
巧みで、感傷的で、とにかく人間くさい。
それがこの映画の目指すところなんかな。
人間であることは、人間にとって最も問われることのひとつです。
正解も不正解もなく、それは人それぞれです。
それを探求する姿に、ただただ魅了された。
魂と人間は、テ画面を通して人間の生活を観察しています。
そして、その人たちを研究し、その意味をより深く理解しようとする。
その時点で、今作品の完成度の高さに惹かれました。
必要なのは、すべてのシーンが可能な限り最高の文章で描かれていると思ったし、沢山ある映画の中での今作品エンディングシーンは佳き1つでした。
ウィンストン・デューク、ザジー・ビーツ、ベネディクト・ウォン、ビル・スカルスゲールドなど、あまり知られていない俳優を含めても、豪華な顔ぶれが揃っています。
ウィンストン・デュークの出世ぶりはとても興味深いし、彼は役を演じるたびにますます良くなり(最初の役ですでに素晴らしかったのですが)、これは彼のベスト作品と云えるかな。
デュークのキャラは他のキャラと最も距離がありますが、理由は割愛しますが、観てる側に最も近い存在に感じられます。
先ほどラストシーンに触れましたが、彼の演技(というか全て)には、良い意味で驚かされました顎が外れました。
また、新進気鋭の俳優、ザジー・ビーツ(『ブレット・トレイン』ではホーネット役)がとにかく良かった。
彼女は自分のキャラで大きな役割を担っています。
台詞と彼女のキャラは、一般的に最も刺激的な思考をもたらしました。
彼女のキャラが進化するにつれて、人間であることについての疑問やモラルが増していき、特にウィントン・デュークとベネディクト・ウォンとの共演は、どのシーンでも彼女を愛しました。
そしてまた、ラストシーンは多くのことをもたらしてくれました。
本当に凡庸な演技はひとつもなかったかな。
アンサンブルは素晴らしい演技仕事をし、キャスティングもこれ以上ないほど素晴らしかった。
エジソン・オダ監督は、最も優れた演出をし、それは、あるシーンに集約されています(ネタバレになりますので割愛)。
限られた予算の中で、より現実的な解決策を見出し、その一環として、舞台やセット、小道具などを使ってた。
彼らがやったことは美しく、体験がとてもリアルに感じられ、ブロッキングの使い方や舞台の使い方には、言葉を失うほどでした。
こないな発想は中々出てこないやろうなぁ。
そして、彼がビジュアルにこだわる人だということがよくわかる作品と云えます。
すべてがビジュアルでできているようで、ディスプレイそのものが物語を語ってます。
だから彼は、ステージや昔のブラウン管テレビ、プロジェクターを使ってる赤、青、緑が全体的に影響力のあるメインカラーの撮影は、ある時はそれらの色を出し、またある時は淡く微妙な色を出していました。
エンディングのシーンは、美しい夕焼けが見事に撮られていますし、砂漠の一色と空の色が見事に調和していました。
今作品は、善き映画でしたが、ひとつだけ気になる点があるとすれば、冒頭がほんの少し遅いことかな。
今作品は、言葉では表現しにくく、映画と同じく、映像が全てを物語ってました。
個人的には善き作品でした。
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