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すばらしき世界のNAOKIのレビュー・感想・評価

すばらしき世界(2021年製作の映画)
3.8
おお朝倉ね!おりゃ筑紫野たい!

役所広司さんの博多弁は地元のおれが聞いてもなんの違和感もなくリアル…確かに同じ九州の長崎の出身ではあるけど方言は全然違うけんね…ほんと…俳優さんちゃ、すごか!(笑)

しかしこの役所広司の「本当の凄さ」をこの映画で思い知らされることになる。

まずこの映画…人生の半分以上を刑務所で過ごした男が歳を重ね娑婆に出てきて更生できるのか?というストーリーは周知の通り、先日見た綾野剛の「ヤクザと家族」との類似も気になるところだがここではそういう雑音を振り切って観る!

役所広司さんの何が凄かったかというと…

彼ぐらいの国民的俳優ともなるとイヤでもみんなイメージを持ってしまうということ…たとえ元極道で殺人で服役していた男でも歳を重ね物事を深く考え(役所さんだったらきっとそうだ)出所後様々な障害に遭いながらも次第にその人柄で周囲の人を魅了し巻き込んで更生していく感動作?

…とか想像しちゃうわけです。

きっと役所広司さんもそんな自分を自覚して演じてると思うんです。

彼が演じる三上という男…長く刑務所にいて歳を重ねても全然成長してない!
「今度こそ堅気ぞ」と声に出して決意しても根っからの極道は全然抜けてない。

最近あまり聞かなくなったが「瞬間湯沸かし器」と周囲の人間は表現してました。カッとすると我を忘れて大声を出し手が出る…

取材している太賀は「この男は小さい頃に虐待を受けて脳に傷を残してしまった人間だ」と考え、
だからすぐキレるし、すぐに笑ったり泣いたりも
すると思うわけです。

役所広司さんのこの「壊れてしまった人」の演技が凄すぎる!
それが異様な緊張感と、時には笑いや感動を生むわけです。
三上の「アンガーコントロール」の成否がこの映画の見どころなのです。

西川美和監督は最初の頃、上手すぎて作為的に見えてしまう気がしておれとは相性が良くないと思ってました。しかし作品を重ねるたびにそれがなくなり前作「永い言い訳」は素晴らしい!と思いました。容赦ねぇな〜と(笑)

今回のきめ細かい演出も見事です。役所さん以外の登場人物が登場した時の第一印象とその後がどう変わるか?本当に見事だと思いました。六角精児さんとかね(笑)

ポスターを見直して…はた!と思いました。
昔どっかで聞いた笑い話…銭湯で背中に二重丸が付いてるおじさんがいて不思議に思って聞くと「龍の目玉」だと言う。つまり龍の彫り物を入れようとしてあまりの痛さに目玉の輪郭だけで断念した…という笑い話。

ポスターの役所広司さん、一瞬見事な彫り物に見えるんだけど色は手前の実物のコスモスの色で…線の墨だけで途中でやめてるのがわかります…しかも片側だけ…本物の極道にもなりきれない…いかに中途半端な人間だったかを象徴してたわけかぁ


娑婆に出たらくさ我慢…我慢の連続たい…
でもね…空だけはね…広いち言うよ
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