パンプキンヘッド久保田

ディアスキン 鹿革の殺人鬼のパンプキンヘッド久保田のレビュー・感想・評価

2.8
鹿革ジャケットに魅せられた男がアマチュア映画撮影を始め、次第に殺人鬼となる映画

鹿革に固執しており、ジャケットの声まで聞こえてしまう
他のジャケットを見たくないというジャケットのせいで、自分以外でジャケットを着る人間を見たくないという男の夢を得る

最初に鹿革ジャケットを買った時にオマケで貰ったカメラを使って映画のようなものを撮り始める
モキュメンタリーのようにして出演者に「もうジャケットは着ない」と言わせてジャケットを掻払う
次第に完全にジャケットを着させない為に殺人にまで発展する
殺した死体からジャケットを剥ぎ取り、死体はそのままにジャケットを穴に埋める執拗さ

その動画を映画編集志望のウエイトレスに編集させる
(ついでに金も工面してもらう)
どんどん殺人はエスカレートするし、全身鹿革の洋服が揃っていく…


中年の危機を感じたオッサンがオシャレに目覚め、女性や若者等の弱者に対して強者のように傍若無人に振る舞い、消費していく様がよく描けていて醜悪だ
オッサンの中年の危機は害悪でしかない

鹿革に執着していくのも強い者であろうとする揶揄に思う
弱者から着る物を奪い殺し、自分だけが強者であると誇示したいのだろう
実際には別居の妻には口座を凍結され無一文のナルシスト
才も無く暴力に訴えるだけしかできない弱者
本人はカッコイイと思ってるが周りから見たら滑稽そのもの
あまりにも気持ち悪くてつい観てしまう(臭い物をつい嗅いでしまうみたいな感覚)

見つめてくるやつ=動物の無言の訴え(環境破壊や動物愛護)、または良心の呵責(悪への現実的な視線) だと思うのだが、結局それに滅ぼされてしまうのが自然的で良い
彼も強者のフリをした鹿だったのだ