天豆てんまめ

リチャード・ジュエルの天豆てんまめのレビュー・感想・評価

リチャード・ジュエル(2019年製作の映画)
4.0
もしあなたが善行をして冤罪になったとしたら……

冤罪は怖い。マスコミの偏向報道も怖い。
物語の行く末を固唾を呑んで見守った。

クリント・イーストウッドが89歳で製作した。年齢を超越している。。凄い緊迫感と締まった完成度だ。

1996年のアトランタ爆破テロ事件がモチーフで、五輪開催中、警備員のリチャード・ジュエルが公園で不審なバッグを発見するとその中身は爆弾だった。

多くの人々の命を救い一時は英雄視されるがその裏でFBIはジュエルを容疑者として捜査を開始。

それを報道記者(「ブックスマート」で監督の才能を見せつけた女優オリビアワイルドが演じた)が実名報道したことで、テレビ局も追い、ジュエルを取り巻く状況は一転。

FBIは徹底的な捜査を行い、メディアによる連日の加熱報道で、ジュエルの人格は全国民の前で貶められていく。哀しい。。

そんな状況に異を唱えるべく、ジュエルと旧知の弁護士が立ち上がる。弁護士役のサム・ロックウェルがやはり素晴らしい!微かな希望が息吹く✨

ジュエルの母のキャシー・ベイツの嘆きと息子の無実を訴え続ける姿に心締め付けられる。母の愛が溢れる🤱

主人公リチャード・ジュエル役のポール・ウォルター・ハウザーの全く役者に見えない(失礼🙇‍♂️)本物感も素晴らしい。連発する失言にイライラしてしまう時も😅真っ直ぐだけど極端で融通の効かない男故に過去にトラブルも多く社会的信用もない。メディアはそこを殊更に強調する。真実は見えなくなっていく。

面白かっただけでは済まされないリアルな重みと怖さがあった。

クライマックス、彼のCIA面会での絞り出した言葉が素晴らしい。そこにはずっと警察権力に敬意と憧れがあった彼の、心の奥底に秘められた嘆きと願いがあった。

そしてイーストウッド作品を堪能する深い喜びを噛み締めた。

あと何作イーストウッドの新作を観れるだろうか。鑑賞する時はこれが最後という気持ちで臨もうと思う。