"鳥には巣、蜘蛛には網、人には友情。"
アメリカインディペンデントの最注目監督ケリー・ライカートの最新作。
鑑賞6作目です。
西武開拓前を舞台に2人の男が、サーターアンダーギーみたいなドーナッツで一攫千金を夢見る物語。
堅実で心優しいクッキーと、野心満々のキング・ルー。
タイプの違う2人の友情がテーマです。
ライカート作品に出てくる男性は、女性の強さと反対に、どこか頼りなげでナイーブな印象。
"男の友情"を柔らかく、時にコミカルに描いていきます。
監督の2人への目線にも、凛とした中にも保護者的な暖かさがあります。
自然を慈しむ目線も健在です。
過去のの作品では犬は元より、ナメクジでさえ優しい視点が。
今回もクッキーがひっくり返ったイモリを助けたり、牛に話しかけながら搾乳したり…
特に牛とクッキーとの絡みは、露出を抑えた暗めの画調も含めて、御伽話的な味わいも感じる名シーンになっています。
ゆっくりした時間の流れ、抑えた演出、ビターな味わい。余韻を味わう、いつものライカート節ですが、後半はいつに無くサスペンスフルな展開でハラハラさせるサービスぶりです。
プッツリと切れるラストが冒頭に繋がる編集は、2人の友情の愛おしさと余韻に溢れます。
今年最後の締めに相応しい作品でした。