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ぼくが性別「ゼロ」に戻るとき 空と木の実の9年間のchidorianのレビュー・感想・評価

4.1
女性として生まれたものの、心の性は男性だと感じている若者を、9年間に渡って追ったドキュメンタリー。
カミングアウト、改名、ホルモン注射、手術、戸籍変更。彼はマイナスからのスタートと言っていたが、体の性と心の性が違うことで、どれだけ苦悩し苦難を乗り越えなければならないことか。
そんな中で、親、友達、バイト先の店長、医師ら、彼を支える人たちの存在に救われる思いがした。
主人公が他の当事者に会いに行くパートがあり、彼にも発見があったらしいことは、最後まで観るとわかるのだが、トランスジェンダー、Xジェンダーなど、セクシャル・マイノリティにも多様性があり、むしろカテゴライズするのが難しいほど個々様々であることがわかる。
中でも、音楽家として大学で教鞭をとり、定年を期に70歳を過ぎてカミングアウト、性転換手術を受けて女性になった、現在90歳を超えている八代さんの人生には刺激を受けた。

【2020/10/24 追記】
日本で法律的に性別を変更するためには、手術することが課せられているが、これは「性別適合」や「性転換」というようなものではなく、生殖機能を失わせるためのもので、著しい人権侵害であると知るに至った。
その上でこの映画に抱く思いは更に重いものになった。
人権を損ない、身体的、精神的、そして経済的にも多くの負担を強いるこの要件は直ちに撤廃されるべきである。
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