千年女優

アフター・ヤンの千年女優のレビュー・感想・評価

アフター・ヤン(2021年製作の映画)
3.0
養女として中国系のミカを家族に迎えた夫婦で、彼女にルーツを学んでもらうため認定再販業者からアジア系アンドロイドのヤンを購入したジェイクとキラ。すっかりミカが懐いたのも束の間にヤンが機能停止で再起不能となり、メモリーに残った映像から彼が一家に向ける眼差しと知られざるその前の記憶を垣間見る様を描いたSFドラマです。

シエナ・ハイツ大学准教授と作家を兼任するアレクサンダー・ワインスタインが執筆してNYタイムズに取り上げられたSF短編小説集の一編を韓国出身の監督で日本の小津安二郎や是枝裕和からの影響を公言するコゴナダがA24製作で映画化した作品で、派手になりがちなSF作品にあって坂本龍一が彩る抒情的な物語が批評家から絶賛されました。

メモリーに残る「記録」が機械的な映像でなく「記憶」だと知る事でアンドロイドの感情を浮彫にする文学的な物語をじっくりと美しい映像と音楽で綴ります。起伏の少ない淡々としたお話で短編小説だからこその魅力やSF的意外性や哲学性を映画として演出できていない所はありますが、普遍的な遺された者の物語として訴えかける一作です。
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