nere795

シチリアを征服したクマ王国の物語のnere795のレビュー・感想・評価

1.2
政治的プロパガンダの映画化

原作が書かれたのは、ファシストからミラノが解放された、つまり
イタリアが敗戦国ではなく戦勝国になりあがったその直後
児童向けだが、というか児童向けだからこその、強烈な政治メッセージが
込められて「いた」のだが…

こういう文脈でとらえると、クマ王国の理想が、だんだんと形骸化腐敗化し、結果的に山に帰る、というモチーフが、きわめてポリティカルな現実のメタファーとして理解されるべきことが明らかとなろう

つまり、これはパルチザン側、さらに言えば、パルチザンを応援した連合国側のことを言っているのである

だがこの映画化では、そのような文脈は、あえて目をつぶったのかどうかは定かではないが、最近の例にもれず、SDGS的文脈に書き直されている
映画製作者は、原作の、「有名な」の文言を一体どう考えたのか?
原作者は、それを描いた当時において、つまりその時点(第二次大戦終結)における、「誰もが知っている」状況を語ったのだ、ということになぜ思いをいたせなかったのか?

動物と人間の共存、まあ、それも主義主張ではあるから、言いたいなら言えばいいが、じゃあ原作を使うなよ、とは思う
原作を蹂躙し、そのうえで、自分たちが込めたかった卑近なメッセージが鼻につく、映画という手段すら使う必要はなかったのではないのか?

絵が汚い、というか、下手、色彩も、あと基本的なデッサン力も
原作の原画もあまり見られたものじゃなかったが、ここまでひどくはなかった

もちろん、メルヘン的な、あるいは、自然との共存万歳、きれいな映像…、
そういう感想を持つ人がいることは否定しないし、それでいいのだとも
nere795

nere795