Kaoru

娘は戦場で生まれたのKaoruのレビュー・感想・評価

娘は戦場で生まれた(2019年製作の映画)
4.3
これ、観たほうがいいわよ。
アタシたちの知らない世界の話だから。

これはね、アラブの春のあとのシリアの大都市アレッポの惨劇ドキュメンタリー映画。
同じくシリアの映画で『ラッカは静かに虐殺される』って映画も観たことがあるけれど、あれは「IS×市民ジャーナリスト」の話。
で、こちらは「アサド政権対×医療チームをはじめとした活動家たち」のお話。

まず思ったのは、おんなじシリアでもラッカとアレッポじゃぁ問題が全然違う。
これらを平たくシリアの内戦という言葉でくくってしまうのは雑すぎやしないかと思った。アタシたち日本人はアラブの国々にあまりにもうとすぎる。中東近辺の地図だってあやふやだし、イスラム教はなんとなく怖いし、ほとんど石油が出る国だと思ってる(←きっとアタシだけw)だからこんな作品を見て、とにかく勉強しなきゃいけない。

内容はみなさんが書かれた通り。(出た、手抜きレビュー)
『ラッカは〜』をはるかに超えるモノホンの死体の数々。それは最近観た『1917命をかけた伝令』なんかで出てくるおびただしい数のよくできた作りもんの死体とはワケが違う。ニセモノとモノホンの死体の違いをクソほどに教えてくれる映画だったわ。

だけれどね。悲惨で凄惨でカオスなドキュメンタリーなのに、アタシたち日本人より幸せを感じて(かみしめて)いるであろう彼らの姿に、尊敬しかない。
外で爆撃されている最中でも、屋内では冗談を言い合って笑っているシーンがいくつも出てきてとても印象的。あの地に生まれたってだけで不運を背負っているのに、そんな中で前向きになろうとする力はアタシたち日本人の比にならない。改めて、幸せはそこにあるものでも落ちてるものでもなく、自分から探すものだし作るものだと思った。

こんな戦場に果たして子供を生むって間違ってるのかと言ったら、多分違うと思う。サマちゃんが周りに歓迎され、たくさんの人を笑顔にしていたのを見てそう感じた。もちろん平和な中で生み育てるのより何倍も覚悟がいることなのだけれど。

冒頭の方で、建築家やドクターを目指していた若者がすすんで看護を買って出たというくだりがあった。あとパンフにはだんなのハムザが手当や手術を施すことを治療と呼ばずに"医療行為"と書かれていた。つまり医者としての学位を納める前の段階なんだと思う。大学生かそこそこの年齢の彼らが、人のために尽くす姿はとてもとても胸打たれた。アタシが学生の頃はいったい何してたんだょ!?笑

あとね、なんであそこから逃げなかったのか意味がわからないとか言う人がいるならば、
きっと彼らこそ、なんで誰も助けてくれないの?と思ってると思う。
想像できないからと思考を止めるのではなく、それでも一生懸命想像して考えを張り巡らせて考えることをしてほしいわ。
理解しようと思うことが彼らへのボランティアへの一歩だと思うから。

あとね、ドキュメンタリー映画に音楽やナレーションをれ入れるのと同様、カメラワークくらいの演出を加えるのは当たり前なの。
ドキュメンタリーではなく、ドキュメンタリー映画ってこと。目的はありのままを伝えるってだけではなく、ありのままをより多くの人に伝えようとして作ったことを忘れてはならないよ。
あのカメラワークはドキュメンタリーなのにおかしいとか、そんなナンセンスな(そしてケツの穴の小さい)コトを言うのはダメ。

おっと熱くなりすぎた。
命について改めて考えさせてくれる作品だったわ。ホントにこれみなさん観たらいいよ。
Kaoru

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