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娘は戦場で生まれたのILLminoruvskyのレビュー・感想・評価

娘は戦場で生まれた(2019年製作の映画)
4.0
原題『For Sama』

監督 : ワアド・アル=カデブ、エドワード・ワッツ
撮影 : ワアド・アル=カデブ
編集 : Chloe Lambourne、Simon McMahon
音楽 : ナイニータ・デサイー
製作 : ワアド・アル=カデブ

内戦が続くシリアの反体制派の最大拠点だった古都アレッポを舞台に、無差別爆撃の恐怖にさらされながら、「全世界」と「生まれたばかりの娘」に真実を伝えるため、4年にわたって市民生活を記録しカメラを回し続けた、人間の尊厳という普遍的なテーマを持ったドキュメンタリー作品。

シリア内戦の実状を描いたドキュメンタリー作品に『ラッカは静かに虐殺されている』がありますが、そちらは「ジャーナリスト」ドキュメンタリーなのに対して、こちらは「市民」ドキュメンタリーになっていて、本作の方がストレートに響きました。

日常的な戦闘や空爆によって人命がいとも簡単に奪われてしまう地獄、空爆に怯える時間や次々に病院に運び込まれる傷ついた人々の姿を捉えた映像が目を背けたくなる"圧倒的なリアル"で胸が苦しくなるほど生々しい。
そんな凄惨なシーンと並行して、隣人を思いやり、苦難を笑い飛ばしながら助け合い、人間としての尊厳を手放さない名もなき人々の姿が描かれていて、そして、思わず声を漏らしてしまうような奇跡のような瞬間も捉えている。

いつも笑顔でこの環境を笑い飛ばしていたおばさんが街を離れる時の悲痛の涙、そして「数千万人が私の投稿を見てる。なのに誰も政権を止めない」と監督の悲痛な語りがこの作品を安全な環境で観てるコチラ側にズシリと重く響いた…
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