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ホモ・サピエンスの涙のmasahitotenmaのレビュー・感想・評価

ホモ・サピエンスの涙(2019年製作の映画)
3.3
全33の場面をワンシーンワンカットで撮影した映像詩で、さまざまな男女が織り成す悲喜こもごもの人生模様が綴られる。
監督・脚本は「さよなら、人類」のロイ・アンダーソン
原題:Om det oändliga (2019)

(33のシーンの一部)
・何年も会っていなかった学生時代の知人を見かけ挨拶するが、無視され癪に障る男。
・神の存在を信じられなくなり、信仰を失った牧師。
・熱力学の第一法則から君はじゃがいもかトマトかも知れないと言われて、○○○の方がいいと言う女性。
・世界征服の野望が砕け散ったと悟った男(ヒットラー)。
・戦いに敗れてシベリアの捕虜収容所に向かう軍隊。
・銀行を信用せずに貯めた金をベッドとマットレスの間に隠すパジャマ姿の男。
・電車(バス?)の中で、"自分の望みが分からない"と辺り構わず泣きじゃくる男。
・理髪店の前に置いた植木に霧吹きをかける少女と隣の本屋から目で追う青年。
・カフェの前で、陽気に踊る3人の若い女性。
・一本道で車が故障してしまい、助けを呼ぼうにも周囲に誰もおらず途方に暮れる男。

特定の人物を主人公とせず、年齢も性別も時代も違う人々の日常の一コマを前後の繋がりを意識せず淡々と積み重ねた作風。
テンポが遅いと感じる人が少なからずいるのはやむを得ないが、観賞後文字で表現してみるとそれぞれのシークエンスはなかなか面白いと感じる。
固定ショット、模型の使用、手描きの背景画、綿密に構成された絵画的なシーンといった独特の手法が使われている。
各場面への誘いは「千夜一夜物語」(アラビアンナイト)の語り手を彷彿とさせるナレーション(「男の人を見た。女の人を見た。○○の人を見た……」)で行われる。
ビリー・ホリデイ"All of me "、ザ・デルタ・リズム・ボーイズ"Tre trallande jantor"の歌声が、作品に彩りを添える。
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