ひろ

マリッジ・ストーリーのひろのレビュー・感想・評価

マリッジ・ストーリー(2019年製作の映画)
4.0
ノア・バームバックが監督・脚本を務めて製作された2019年のイギリス/アメリカ映画

テレビで有名になった女優と新進気鋭の舞台監督の夫婦。長男を授かり幸せだった家庭。そんな夫婦の離婚調停を描いた物語。少しコミカルで笑顔なったり哀しくなったりする作品

この監督の作品は当たり外れが結構あるが、これは間違いなく当たりの方。離婚を描いた作品なんか星の数ほどある。この作品でも例外になくセラピーを受けたりしている。しかし泥沼の喧嘩とは少し違い、間違いなく息子を愛している夫婦であること。そして相手を尊敬しているという点では多くの物語と異なる。ボタンのかけ違いというと陳腐な表現になってしまうが、ほとんどのパターンはそれだ。この夫婦にも危機を乗り越えるチャンスはいくらでもあった。でも争うハメになる。それが切ない。全く知らない夫婦だったのに、観てるうちに親しい夫婦な気分になっちゃうから

ニューヨークとロサンゼルスを行ったり来たり、州ごとに法律が異なるアメリカ。裁判もどこでやるかが重要なのだ。仲良くしてくれよと友人目線で見てしまうのだが、仲良くしたら映画にならないので、どんどん悪化していきます。子供の心境も考えるとしんどい。仕事で実力を認められて家庭への比重が減る。これも理解できる。認められる喜びがあるから。自分の道を塞いでも子供のために生きる。この気持ちにも間違いはない。だから切ない

妻ニコール役のスカーレット・ヨハンソン。「ジョジョ・ラビット」での母親役とこの母親役でアカデミー賞にダブルノミネート。初期から見ている女優さんだけど素晴らしい女優になった。愛と憎しみの狭間でもがくニコール。しかし女性は大概強い。息子のためにまっすぐなニコールはイケメンである。メンじゃないけど

夫のチャーリー役はアダム・ドライバー。人気がうなぎ上りの俳優だけど、これまたいい演技してます。自尊心と愛のバランスで迷子になるのは男にありがち。迷子だけど強がるから余計にこじれる。それが男の子。この俳優はそういう表情がうまいんだわ。もー!ってなっちゃうのよ

思えば、ブラック・ウィドウとカイロ・レンの闘いだ。アサシンであるウィドウと中二病をこじらせたカイロ・レンではそもそも分が悪い。的確に弁護士を使い急所を狙ってくるウィドウに対し、ダークサイドに落ちていじけるカイロ・レン。勝てる気がしない。ダークサイドに落ちると子供ともうまくいかないのは、スター・ウォーズという実話でよく描かれている。機会があったらご覧ください

さらに脇を固める弁護士役の俳優も欠かせない。離婚に弁護士は必須アイテム。アカデミー賞助演女優賞を受賞したローラ・ダーン。個性的ながら強い女性としてニコールを援護する弁護士。まさかオスカー獲るとは思わなかったな。面白い役柄だけど、オスカー獲るタイプの演技だとは思わなかった。ライバル弁護士を演じたレイ・リオッタの方が好きだな。この人は憎まれ役とか最高に上手

「クライマー・クレイマー」という名作もあるけど、結婚を描いた作品なんか印象に残らないが、離婚を描いた映画の方が家族愛をビシビシと感じる気がする。そんな家族愛を感じてしんみりした後に、幸せそうなポスターを見るとなんとも言えない気持ちになる。そんな気持ちになる映画は映画としては正解なのだ
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