Rocko

おもかげのRockoのレビュー・感想・評価

おもかげ(2019年製作の映画)
3.7
HPで公開されていたショートフィルム『Madre』があまりに素晴らしく、ほぼ電話の会話だけで見せる主演女優マルタ・ニエトの自然でリアルな演技に惹かれて長編鑑賞即決。

本編に丸っと短編が組み込まれ女優さんも同じなので、短編と長編連続で楽しめる美味しさがあります。短編を観ていない人にも経緯がわかるように作られており、エンディングに微妙な違いがあったのと明かされなかった事実の一つが本編でわかるなど短編が長編に到達するための伏線として綺麗に機能していました。

長編もすごくよかったです。
短編のサスペンス色とはまた違った良さがあり、主人公エレナが困難な状況に立たされながらも努力をしている姿や複雑な精神状態を見ていると辛い筈なのにフランスのビーチや周辺の景色が綺麗で悲しさも痛さも全てを呑み込んで美しい。男の子役の聡明感もよかった。
撮り方がいい具合にセクシーで服装の色で表す精神状態や主人公の心情を巧みに隠してくれる細やかなヨーロッパ(スペイン・フランス)作品の世界観に溺れました。

主人公の立場に自分を置き換えて考えるよりも一人の女性が少しずつ再生していく中での希望をただただずっと観ていたかった。エレナの行動は何一つ他人が非難するものではなく、全て彼女自身が選んだこと。
短編から10年後の長編でしたが、エレナの20年、30年後もずっと観続けたい・・・そんな余韻に浸れる作品でした。

●2020年180作目●
Rocko

Rocko