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ヴェノム:レット・ゼア・ビー・カーネイジのトルーパーcomのレビュー・感想・評価

4.0

#ヴェノム #カーネイジ
DolbyATMOS上映で観賞。音/映像ともにアクションシーンの出来/迫力は秀逸。
前作よりもCGが質量とも格段に向上し、悪役のイメージカラーが赤ということもあって映画の絵的にも見栄えがする作品になっていたという印象。


■低音ヴェノム
池袋グランドシネマサンシャインのDolbyATMOS上映で観賞してきました。
Twitterの評判で、音響が凄かったという声が多く見られたのでATMOSを選択したのだけれど正解だった。

特に、ヴェノムとカーネイジがしゃべる時、低い声が劇場全体に響く感じが最高。
「エディ!」「腹減った!」など、ヴェノムがしゃべる度にシートが軽く振動するくらい低音でくるので、共生された感覚を疑似体験できたような。

本作の目玉であるカーネイジが大迫力で暴れるシーンも、ちょっとびっくりするくらい音が響き渡って凄い迫力。
ドルビーアトモス上映はオススメできます。

この映画は2回目観るなら4DXでもけっこう面白いんじゃないかなと思いました。


■赤&黒
個人的に前作『ヴェノム』(2018)の減点ポイントとして、画面が終始暗い&ヴェノムも敵も黒い生物なので、何が起こっているのかわかりづらい&映画のイメージ全体として画面が映えないという点がありました。

しかし今作はカーネイジというキャラクターのおかげで、そのマイナス点がクリアされていたという印象。

もともと赤と黒という2色は、色の組み合わせとして相性がよく、カーネイジというキャラクターはとにかくスクリーン映えする。

2人が攻撃しあったり、人質をとられたりetcどんな場面であっても、
赤黒の色分けがあることですごく見やすいのでアクションシーンに集中することができて、結果、感情移入もしやすく気持ちが盛り上がる。

また、車/バイク/悪役の服装など、映画の至るところで「赤色」が使用されていたのもとても良かった。

個人的に赤という色が好きで、自宅の家具/小物/洋服なども赤いものを選びがちなので、本作は絵のイメージだけでもう好印象でした。



<以下、ネタバレあり感想>




■夜景
個人的に本作でいちばん印象的だったのが、サンフランシスコの夜景です。
場面とか日付が切り替わるようなタイミングで、ワイプ代わりに都度いちいちサンフランシスコの夜景が挿入されていた。

ハリウッド映画で、ヘリから映したようにNYなどの都市の夜景を真上からガーッとなめるような映像が昔から好きなのですが、
本作ではそんな感じのショットが5回以上?何度も何度も挿入されていて素敵だった。


■「最悪」描写
前作公開時、日本版キャッチコピーで「最悪」という語が使われてたけど内容見たらぜんぜん最悪じゃないじゃん笑
って感じだったけれども、今作は割と最悪描写が増していたのは良かったと思う。

エディの言うこと聞いてチョコしか食べないヴェノム、じゃあダメですよねやっぱり。

TVのくだりとかニワトリのくだりで可愛さは入れつつも、エディではコントロールできずにヴェノムに部屋も物もめちゃくちゃにされるし、
カーネイジは劇中数十人単位でガンガン人殺してる。

ラストでクレタスをぱっくりいくのもなかなか潔くて良かったです。
今作のレーティングがG(全年齢OK)なのが不思議。


■キャラクターについて
*エディ&ヴェノム(トム・ハーディ)
前作で確立した2人の奇妙なバディは本作でも健在。
この手のシリーズもの映画の「2」の作品では、仲間とか恋人とか、前作で築いた人間関係に危機が訪れる話が割と定番だけれども、本作でも仲良しカップルに破局の危機が訪れます。

危機に陥るパートナーはアンじゃなくてヴェノムっていうね。痴話喧嘩からの危機を共に乗り越えてラストはハネムーン的な。

近年、性別や年齢を超えた、従来の恋愛関係とは違う形を描いた作品が増えていますが、ヴェノムはそういう意味では時代の最先端をいっているともいえるかも。


*クレタス・キャサディ/カーネイジ(ウディ・ハレルソン)
大轟音と質の高いCGで画面いっぱいに展開される赤い殺人鬼、アクションシーンは120点でした。
終盤、迫力のキメ台詞が劇場中に響き渡るシーンは至高の瞬間。

彼の過去を語るシーンで唐突にアニメが挿入される演出もなかなか良かったです。
『ハーレイクインの華麗なる覚醒』(2020)もそうだったけれど、キャラクターの過去をダラダラ描くと退屈するのでこういう演出で片付けるのは上手だと思う。


残念だった点として、中の人クレタスの異常性がちょっと不足していたかなという印象あり。
カーネイジというバケモノの恐ろしさは十二分に伝わってきた反面、シンビオートの力がなくてもクレタスという人物は恐ろしい、っていう描写は不足していた気がします。

個人的に、ウディ・ハレルソンという俳優はけっこう好きなのですが、前作のポスクレシーンで最高潮に高まった期待には応えてくれなかったかなという印象。


*フランシス・バリソン/シュリーク(ナオミ・ハリス)
口から超音波の人。彼女の出す超音波がヴェノム&カーネイジにとっては最悪で、
だからこそクレタスにとっては最愛の人だけどもカーネイジにとっては最悪な存在、っていうプロットは良かったと思います。

そこが一枚岩じゃないから → 一枚岩になれるヴェノムたちが勝つ、っていうロジックに説得力がある。

ただ、キャラクターのビジュアルとしてはちょっと弱かったかなという印象。
特にイメージカラーもなく、黒っぽい衣装で画面に埋もれてしまっていた気がした。


*アン(ミシェル・ウィリアムズ)
前作よりかなり存在感があって魅力的なキャラクターになっていた。
失業から始まって、終始イライラした様子の強かった前作に対し、今作ではダンと婚約して精神的に落ち着いていたのか、頼もしい弁護士感がありカッコよかった。

ちょっとだけだけれど、今作もシーヴェノムなシーンがあったのも◎


*ダン(リード・スコット)
前作で最高のナイスガイだった彼。今作では最初好感度低めだったけれども、最後はやっぱり俺達のダンだな!って感じ。

ヒーロー映画において、主人公をヒーローたらしめるのは能力ではなく行動なんですよね。

だから、アイアンマンvsアイアンモンガー、ハルクvsアボミネーション、スーパーマンvsゾッド将軍etc
ヒーロー映画では主人公と同様の能力を持ちながら、その能力を悪事に使う悪役と最後に対決するという構図をとる作品が多い。

そして、主人公がその英雄的行動によってヒーローとなるため、ヒロインは主人公を愛し、結ばれるわけです。

そうすると、ヴェノムが人質となったアンを助けにやってきて、その能力を彼女のために使って救出する話だったらアンはエディと結ばれなきゃおかしいことになる。
そこでダンの行動ですよ。

ダンは何のスーパーパワーも持っていないけれど、あんなバケモノに対して臆することなく、婚約者アンの命を救うために英雄的な行動を見せる。
アンにとってはダンもまたスーパーヒーローなんですね。
ダン最高です。


*マリガン刑事:いまひとつ存在理由がわからなかったキャラ。次作への布石か

*コンビニのおばちゃん:ヴェノムとの関係が割と好き


■減点ポイント
1)ちょっと疲れる
本作は上映時間97分と比較的コンパクトな作品の割に、スポットを当てるキャラクターの人数がちょっと多かった気がします。
・エディ&ヴェノムの楽しい日常を描き
・両者の破局を描き
・アン&ダンとの現在の関係も描き
・クレタスの生い立ちとヴィランの誕生を描き
・シュリークの生い立ちとヴィランの誕生を描き
・破局からの修復を描き
・ヴィラン2人の退場までを描く

っていうのを全部やるのは要素が多すぎて、尺的にちょっとお腹いっぱいだったかも。
そのせいで、割と映画が落ち着く時間がなくて、上映時間以上に疲れてしまう感じがありました。よく言えばジェットコースター映画なんだけれども。

映画が落ち着いてたのは部屋を片付けるシーンの5秒くらいだけだったような。

あと、カーネイジ&シュリークを潔く殺しちゃうシーン、特にクレタスをヴェノムが食べるっていうのは最高だったけれども、
わざわざ悲しい生い立ちを描いたのに1作で退場っていうのはちょっともったいないなとも思ったり。
97分の映画でまとめるボリュームじゃないなと思ってしまいました。


2)ヴェノムのCG
カーネイジのCGが素晴らしかった反面、ヴェノムのCGは今作もやっぱり今ひとつっていう印象。
やっぱり黒と白だけでリアルな質感を出すのって難しいんでしょうか?

大半を夜のシーンにしてごまかしてましたが、どうもヴェノムというキャラクターのビジュアルに実在感がないように感じます。
明るい店内で登場した、コンビニのおばちゃんに憑依するシーンとかかなり安っぽかった。ドルビーシネマとかで観たら多少違うのかな?

首から蛍光の輪っかをさげたクラブのシーンは絵として面白かったので、黒一色というのがそもそも面白くないということなのかもしれないけども。
あのシーンは着ぐるみなのかな?メイキングとか見てみたい。


【スコア】
★4.0で。

若干の減点ポイントはあるものの、全体としては楽しめる良作でした。
アンディ・サーキスって監督もやるのね、って最初思ったたけど、よくよく考えたらCGのキャラクターを主人公にするっていう点ではこれ以上ない人物だったか。

シリーズもので「2」の方が面白い!っていう作品は意外とないので、この調子だと次作にも期待できますね。
ポスクレシーンも予想はしてたものの期待に応えてくれてワクワク感あり。


■パンフレット(880円)
質感は凡。コミックの解説と、キャスト陣のインタビューは割と充実してたので、まあ買って損はないかも。

表紙:★★★
質感:★★
写真:★★★
インタビュー:★★★★
解説記事:★★★★
撮影秘話等:★★★


■劇場グッズ
クリアファイル/メモ/マグネットなど最低限の展開あり。
お年玉利用に向けてか?ポチ袋が売ってたのが印象的。
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