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ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバーのMoviePANDAのレビュー・感想・評価

3.3
『 理想と現実🐚 』

描かれる衝突は、本来戦う必要の無い“同志”によるもの。その衝突の引き金は別の国によるものであり、この別の国により図られる国家弱体化という構図は、まさに今この時代の写し鏡。

「優れたポップ・カルチャーは社会の写し鏡であり現実へのリアクションである」とは音楽評論家田中宗一郎さんの2018年の言葉。「と同時に、誰もが何となく感じていても言語化したり具体的にフォーカス出来ないでいる新たな視点やヴィジョンを提示するもの(答えではなく)。」とも仰っているが、まさに今この時、この作品の事を言い得てると思う。

リーダーの理想により開かれた国は、そのリーダーの逝去により世界から狙われる存在となる皮肉と現実。一見すると揺るがないその張られた虚勢は、家族愛故に脆くも崩れ去る。その点、今回敵国家とされるタロカンは前作においてのワカンダと重なり、感情移入の対象はむしろネイモアの方だった。

この何とも解せない所感こそ“今”の写し鏡であり、また映画というポップカルチャーの意義であるとも思う。ただ、反撃のあのタイミングであの決め台詞を言わせてしまうのには複雑な想いを抱いたし、後決め後出し感満載のこのフェーズの着地は本当に空虚なもの。ラブ&サンダーを最後にMCUを劇場に観に行かなくなった事が自分の中で象徴的な2022年だった。

あと、タロカンのガジェットは面白かったけど「アバターWOW」からのこっち鑑賞だと見劣りしちゃうのは仕方が無いか(あっちは海に懸ける本気度が違うし!)。もう一つ、「ステラが恋に落ちて」でボクがまさに恋に落ちたアンジェラ・バセットのエモーショナルな熱演は素晴らしかったと共に、その“感情に走った”が故に国は墜ちるというのもせつなくも現実的だった。愛も時に衝突の引き金となる。
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