<彩りを取り戻す、ピンクのネイル>
映画冒頭、手持ちカメラがグラグラして、酔ってしまいそうなくらいの不安定さを感じさせる。そして、極端なまでにマゼンタ(赤)を抜いた映像。彩度を失った青ざめた色彩は、ジリジリとした蝉の鳴き声が響き渡っても、全く灼熱の太陽の温度さえも感じられない。
精神的な不安定さと生気を失ってしまった主人公の悲しみ。
それを色彩とカメラワークで表現した作品だった。
主人公を苦しめるものから逃れるための逃避行で、タカラとショータが取り戻したものは、ほんのり色づいた色彩。
邦画らしさ、邦画の良さが全面に出ている社会派ヒューマン・ドラマだと思う。とにかく、芋生悠さんの演技が素晴らしかったです。
(ただ、ラストシーンはなくても良かった感がある)