けーすけ

ソウルフル・ワールドのけーすけのレビュー・感想・評価

ソウルフル・ワールド(2020年製作の映画)
4.2
2020/12/26(土) Disney+にて鑑賞

ジャズ・ミュージシャンの夢を追い続けてきたジョー・ガードナー。ある日、憧れのジャズクラブでの奏者に抜擢されたのだが公演を前に不幸にもマンホールに落下してしまい、あの世へ旅立つ一歩手前まで行ってしまう。そこから逃げ出そうとした彼がたどり着いたのは人間界に生まれる前のソウル(魂)たちが暮らす世界だった。一刻も早く元の世界に戻りたいジョーはメンター(指導者)として、何百年もソウルのまま人間世界に行きたがらないヒネクレものの“22番”に地球で生まれるためのキラメキを見つける為、共に行動をするのであった・・・









2020年、コロナに始まって、国内・世界情勢ともに好転しないまま1年を終えそうな年の瀬、『ムーラン(実写版)』同様に劇場公開をせず配信のみでの提供となってしまった本作。家で気軽に視聴できるのは嬉しいけど、やはり映画館の大スクリーンで、大音響で観たかったなあ…。


お話内容は子供から大人まで観て楽しめる、安心安全なもの。でもやっぱりピクサー作品。大人が観て「深い・・・」と思わせられる部分がいっぱい詰まっておりました。

(と、偉そうに言っておりますが僕は数年前まで「CGアニメーション映画ってどうせお子様向けでしょ~」と敬遠していたヒネクレものでした。ある時たまたま『インサイド・ヘッド』を観て号泣。心を入れ替えて『トイ・ストーリー』3作を一気見して号泣して改心した経緯があります。笑
もし当時の僕と同じような気持ちで敬遠している方がいましたら、是非思い切ってチャレンジしてほしい・・・)




さて本作。ピクサーの3DCGアニメーションの美しさは、ここ数年でおそらく境地に達したと言っても過言でなく素晴らしくて、ニューヨークの街並み等は実写と見まごう作り込み。
とはいえ完璧な実写的作り込みではなく、人物のキャラ描写にあわせたデフォルメを施してあって、そのバランスが全く不自然に感じないというのが恐ろしい凄さ…。



本作ではジョーがジャズミュージシャンとして生きていきたかったという部分が根幹にあり、音楽も重要な要素としてBGM含め随所に描かれております。序盤に学校教師として生徒に音楽を教えるシーンでジョーが演奏するピアノが最初の見せ場。音楽好きにはワクワクする事間違いなしです。


序盤~中盤はジョーが自分の身体へ戻る事が一番の目的で、出会った22番をなんとか人間界へ行きたいと思わせるためにあれこれするのですが、そこからがまさかの入れ替わり転生&バディもの展開!
ドタバタと笑いがこれでもかと散りばめてあります。そして、それらの何気ない笑えるようなシーンが本作の一番重要な部分を占めているというのがとてもニクい作りなところ。

笑いやヒューマンドラマを交えつつ、ジョーがそれまで夢見てようやく手に入れたものの、さらにその先で見つけたものが心にザクザク刺さりました。

少しだけ不満点を述べたいとすると、22番との繋がりや絆的なものの描き方が少し弱く感じたかな、と。





この映画を観る少し前に読んだ星野源さんのインタビュー記事が印象に残っており、彼は自身のキャリアで「まさにこれから」というタイミングで2012年にくも膜下出血によって長期間活動を休止していたのですが、その時の経験をふまえてこう仰ってます

「あのときに生まれ変わったという感じはありますね。実際に死というもののギリギリまで行ってタッチして帰ってこられた。そこで学んだことは、死の向こう側にはなにもないということ。“無“しかないんですよ。以前は追い込まれると軽はずみに口にしていた『死にたい』という言葉も使わなくなりました。ある種の死へのロマンやナルシシズムが消えて、現実的に生きられるようになったのかもしれません。現実を生きながら、それでも自分自身が楽しまなきゃなって。すごくシンプルなことだけど、そう思えるようになったんです」

(星野 源──「うちで踊ろう」悲しみの向こう 歌で手をつなごう https://www.gqjapan.jp/culture/article/20201225-moty-gen-hoshino)




『ソウルフル・ワールド』では死と生まれ変わりの世界にタッチして不思議な経験をして戻ってきたジョーという男性が描かれていますが、普通なら味わえないであろう死生観を、映画を通してわかりやすく教えてもらえた気がしました。
でも本当は星野源さんが言うように死んだ先は“無”なんだろうな…。



コロナ禍だった2020年。過ごす日々に変化が少なすぎて、僕自身においても「生きるって何だろう」とか考えてしまう事もしばしばあって「寝る。起きる」「仕事する」「食べる」の繰り返しに思考停止事もしばしば。


色々な映画を観て救われてはおりましたが、本作を観て「美味しいいご飯が日々食べられる幸せ」「シャワーの温かいお湯お風呂に入れて幸せ!」「映画で様々な感情を体験できるなんて、何て幸せなんだろう」と前向きに、些細な事にも感謝と幸せを感じて生きていこうと思わせてもらえる映画となりました。


ただ、A113とピザ・プラネットの車が初見で見つけられなかったのが悔しい!!笑


[2020-187]
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