めかぽしや

カセットテープ・ダイアリーズのめかぽしやのレビュー・感想・評価

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チャンチャンチャンチャン
出だしからゾクゾクしました。
ペット・ショップ・ボーイズの
“It’s a sin”
この曲を聴いていた中学生の頃が
蘇りました。

本作は87年当時のシンセサイザー全盛の
曲ではなく
ブルース・スプリングスティーン
の曲が全面フィーチャーされています。
ブルース(ボス)の曲はあまり好きではないけれど当時の洋楽シーンを追っていると
好きでなくても知っているぐらい
チャートによく上がっていました。

さて、87年のイギリスは
『フルモンティ』や
『リトル・ダンサー』でも描かれていたようにサッチャー政権下の新自由主義経済で
労働者・組合への弾圧、大規模なリストラ、ナショナリズムからなる右傾化、移民排斥運動と激しい時代。
(昨今もこの時代がぐるりと一周して
やってきたなと感じてしまいます)

ただでさえ生きにくい時代で
しかもパキスタン移民のジャベドは
人種差別や保守的な父親との確執とで
鬱屈と焦燥を抱えています。
ジャベドは日記や詩で自分の想いを
書き溜めてました。
そんなある日、学校でブルース・スプリングスティーンのカセットテープを
貸してもらいボスの曲の歌詞と
自分の実情が重なり衝撃を受けてから
ドップリとボスにハマっていくのです。

この当時はボスの曲は親の世代が聴く曲で
若い子たちニュー・ウェイブやダンスミュージックを聴いていて
劇中にワムボーイとかバナナラマガールとか揶揄しているシーンがあるくらいです。
そんなニュー・ウェイブやダンスミュージックがたまにかかるとささやかな嬉しさが残りました。

もがいて、もがいて這い上がるジャベドの姿とボスの歌詞がリンクして
気持ちも高まっていきます。

原題のBLINDED BY THE LIGHT
はボスの曲の題名でもあり
眩しくて“光で目もくらみ”
ジャベドの想いが詰まっています。

家族は嫌いだけど好き、
自分の足かせだけど心地よく、
どう夢を叶えていくか。

若者が走りながら感情をぶつけるシーンは
どの映画を観ても大好きです。
めかぽしや

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