しゆ

カブールのツバメのしゆのレビュー・感想・評価

カブールのツバメ(2019年製作の映画)
4.0
98年タリバン支配下のアフガニスタンで生きようとする、2組のカップルの物語。

水彩調の終始抑制されたタッチの美術・アニメーションが非常にうつくしく、同時に暴力と死がすぐそばにある厳しい日常も生々しく描かれる。

『トゥルーノース』でも、収容された人々を待ち受けるあまりに過酷な現実を写実的に描くのではなく、デフォルメされたキャラクターで描くからこそ、鑑賞者が自分のこととして引き受けられる普遍性を生む効果が得られていたと思う。
本作『カブールのツバメ』での表現もそれに通じるものを感じた。

終盤ズナイラに待ち受ける運命とその行く末には、「アフガニスタンの女性たちにツバメのように自由を手にしてほしい」という思いが感じられるも、ズナイラに手を差し伸べたあの人もまた、自身で自由を手にする権利はあったのでは……。
若くて健康でなくても、すべての人の命や自由の価値は同じなのでは?と思わないでもなかったけれど、極度の抑圧を受けた人々が前途ある若者に未来を託したくなる気もちは分かる。

19年の作品だけれど、21年のアフガンの状況によって、再びこの作品が切実な価値をもってしまったという事実が重い。
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