けいたん

名もなき生涯のけいたんのレビュー・感想・評価

名もなき生涯(2019年製作の映画)
3.6
第2次世界大戦下のオーストリア。山と谷に囲まれた美しい村で、妻フランチスカと3人の娘と暮らしていたフランツは、激化する戦争へと狩り出されるが、ヒトラーへの忠誠を拒んだことで収監される。



こんなに会話のない映画を初めて見た。慣れていないからか、3時間を長く感じてしまった。

ナチスに物凄く抗議するわけでもなく、本当にただただ自分の信じるものを…という感じ。


美しい村で妻と子どもたちとずっと幸せに暮らしていく、そう信じていたのに、戦争が彼らを引き裂く。


「手は縛られているけれど意志が縛られるよりいい」
強い人。ヒトラーが嫌い、戦争は嫌だ、罪のない人を殺したくない、その気持ちはよくわかる。

だけど、家族が自分のせいで村人たちから酷い仕打ちを受けていると知った時、口先だけの忠誠の言葉を言う事は出来なかったのだろうか?と思ってしまう。
みんなが言う、口先だけでいい、口先だけでいいんだと。


「君の行動が戦争の行方を左右すると思うか?」
左右したのかはわからない。だけど誰かの心には響いただろう。判事さんもそのひとりだったのでは。
たった数分だったけどブルーノ・ガンツの存在感は凄かった。


フランツはナチスに加担するよりも自らの信念に殉じたことで、後に列福された(映画ではそこまで描かれなかった)。何十年もかかったけど、彼の信じたことは間違いではなかったのだと証明された。


映像が素晴らしい。彼らの信じる神さまが住んでいるような神々しい山々だった。