抑制された情熱が決壊する瞬間が強烈……。
絶賛に次ぐ絶賛の声で劇場で観ざるを得なかった。そしたら、期待を超えてきた。
孤島に住む貴族の女性エロイーズと召使ソフィ。そこに訪れる画家の女性マリアンヌ。
マリアンヌがエロイーズの肖像画を描く。ただそれだけの目的から始まった物語がここまで深く狂おしいドラマになるとは……。
孤島の屋敷に着いたマリアンヌが暖炉の前で裸でパイプを燻らせる姿の美しさに目を見張る。かっこいい。
ただ前半はあまりの‘溜め’の深さに、日常の時間感覚との違いに驚く。
展開はじっくり進む。なのに美しい2人の美女が交わす視線と繊細な表情で魅せられてしまう。“視線の美とエロス”に満ちていて見飽きることがない。音も映像も構図も研ぎ澄まされて、2人を固唾を呑んで見守る。
マリアンヌとエロイーズ。ふたりとも強い磁力に満ちている女性。
画家のマリアンヌを演じたノエミ・マルランのキリッとした眼差し。
貴族の娘のエロイーズを演じたアデル・エネルの激しい感情の迸り。
最初は全く心を開かないエロイーズと、画家としてのプライドで自身も心を開かないマリアンヌがやがて島をふたりで散策し、夜は蝋燭と暖炉の火の下で召使のソフィと共にカード遊びに興じ、じわじわと内面から沸き立つような感情に駆られていく。
そして、ふたりの感情が臨界点を超えていく中盤以降は完全に飲まれて眩暈を起こすほど美しかった。特に野外で焚火の前で島の女たちが歌い出すシーンは異様に美しく鳥肌が立った。
島の女たちが歌う中、焚火をはさんでふたりは見つめ合い、炎がエロイーズのドレスに燃え移る。その後の激情の決壊。
こ、これは、、究極のツンデレ女子VSツンデレ女子の抑制の末の決壊の愛とエロス。
溜めて溜めて溜めて溜めて、、、、バーーーーーーーーんッ!
せっかちな世の中でこんな‘溜め’の破壊力を感じることなんて日常経験できないのでこの映画と共に過ごす2時間で新たな身体感覚が得られるだろう。
後半からは2人の感情の襞にぞわぞわさせられながらのめり込んだ。ラストシーンは近年にない程に完璧。
これはどう考えてもスクリーンで観た方がいい傑作だ。
こういうタイプの映画は観たことが無い。
恐ろしいほど美しい映画だと思う。