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マー ―サイコパスの狂気の地下室―のkuuのレビュー・感想・評価

3.6
『マー -サイコパスの狂気の地下室-』原題Ma.
製作年2019年。上映時間99分。

テイト・テイラー監督が、オクタビア・スペンサー主演で放つアメリカンリベンジスリラー。
共演に『ナチュラル・ボーン・キラーズ』のジュリエット・ルイス、実写版『美女と野獣』のルーク・エバンス

オハイオ州のとある街で孤独な生活を送る女性スー・アン。
ある日彼女は、街で出会った地元の女子高生から、未成年である自分の代わりに酒を買ってきて欲しいと頼まれる。
その出来事をきっかけに、スー・アンは自宅の地下室を高校生たちのパーティの場として提供するように。
楽しい時間を過ごす高校生たちだったが、スー・アンの態度は次第に変わりはじめ。。。

顔を横に引き伸ばしたデフォルメと、現物を再現したような写実のあわいで神秘的な表現の高みに到達したかのような、ただならぬ影響力を持つ女性像。
として、小生は、ふと目にして以来、脳裏に焼き付いて離れない、もしかすっと、近代以降の日本絵画ではもっともよく知られたイメージかもしれない。
嗚呼、麗子像。
それは、岸田劉生が、麗子が生まれて間もない頃から15歳になるまで、油彩、水彩、水墨など、現存するだけでも50点を描いたとされる《麗子像》。
誰の胸にも複雑な感慨を抱かせてしまうのが、この作品の底力というものなのだろう。
夢に出てきそうなあの容姿。
その麗子像の容姿を現代の米国に移して年齢を重ねた感じが、今作品の”マー”ことスー・アン。
こんな感じ。
余談ながら、実際の麗子は、豈図らんや、細面で鼻筋の通った、凛とした美人。
あの押し潰した鏡餅のような輪郭は、劉生がタイムスリップして現代に来て、今作品を見た上での『表現』だったのか。。。は、わかりませんが、麗子像とマーは似てました。
マーの地下に集まった高校生アッシュリー(チョイ出演の女子、神父の娘で寝た振りをする役の)は、きっと、進撃の巨人の女子巨人の中に、似たのはいると思う。
エリカ・トンプソン役のジュリエット・ルイスはパンクバンド『Juliette and the Lick』のボーカルしてんのフジロックでみたけど、奥目の八ちゃん(岡八郎)か、宜保愛子に見えて仕方ない。

スー・アン役は、もともと白人女優のために書かれたものだそうで、テイト・テイラーは、オクタヴィア・スペンサーに脚本を見せたところ、彼女がこの役を演じることに興味を示したため、アフリカ系アメリカ人の女性に適した脚本に修正。
二人は『ヘルプ』で共演しています。

思っていた以上に奥が深い作品やった。
マーがとっても必要とされているという側面があったかな。
しかし、ここには意味のある深いストーリーがあって、彼女がどれほど精神的に病んでいるかにもかかわらず、実際にはちょっとした悲劇的なキャラになってる。
また、この作品の面白いとこは、見当違いのことをしているとこかな。
この手の作品やと、トラブルを恐れて親に何も云わないちゅうことを取り入れているのがよかった。
若かった頃、こないな理由で秘密にしていたことを思い出すことができる方はおられるはず。
しかし、この10代のガキたちは、少々やり過ぎやと云わざるを得ない。
ヤツらが平気で飲んでいるハードリカーより、マーがギャルのテレフォンナンバーを知り得たテクはスゴいが種明かしナシ。
これは些細なことやけど、とても気になりましたってかなってる。
また、この映画の中で明らかになった、あまり意味のないことがありました。
過去に起きた出来事で説明がつくのかと思いきや、そうじゃなく、正直なところ、このキャラがなぜそこにいるのかよくわからない。
映画を壊しているわけでじゃないが、クライマックスのために便宜的に存在しているようにも感じる。
あとは、狂気のマーちゃんを見せることだけが、他の側面やろな。
クライマックスについて云えば、今作品はテンポが良い。
上映時間は100分を切ってるけど、退屈することはなかった。
他のガキたちがマギーと仲良くなるのは少し早いけど、緊張感のある展開と、それに見合った結末がしっかりと用意されていると思います。
クライマックスの展開は予想してへんかったけ、まぁ勘のイイ方はプ~ンじゃない、ピ~ンと来るかもですハイ。
今作品の演技については、スペンサーは巧い。
彼女はこの役を見事に演じきってた。彼女は良い女優やとは知ってたけど、彼女から得られる感情の幅が、改めて大好きになりました。
今作品の主人公は自分の過去の側面と向き合うことで悲劇的になる。
10代の若者たちの中で生きている彼女に同情した。
また、彼女がキレると怖い
((( ;゚Д゚)))ガクガクブルブル。
彼女は短時間でこれらの問題を解決していくのやけど、これもかなり無理がある。
アンディの父親役のルーク・エヴァンスや、ミッシ・パイル、アリソン・ジャニーが出演していたのも面白かったかな。
このように、キャストは非常にエエ仕事してたし、必要な部分を丸くしてくれたと思います。
加えて、使われているエフェクトは実用的なもののようで、数は少ないが、いくつかのエフェクトには実際にゾッとさせられた。
また、今作品では古い音楽がたくさん流れましたが、これは良いタッチだと思います。
これは面白いことに、ほとんどが彼女の時代のものなので、納得がいきます。
雰囲気を盛り上げるような曲もあって、それが緊張感を高めるのに役立っている。
今作品の存在は知ってたけど、また、どんなんかを想像していましたが、実際にはもっと深い内容でした。
演技力の高さがそれを実現しているのだと思います。
テンポが良く、緊張感を持ってクライマックスに臨むことがでしました。
面白い作品でした。
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