けーすけ

罪の声のけーすけのレビュー・感想・評価

罪の声(2020年製作の映画)
4.2
2020/10/31(土) T・ジョイPRINCE 品川 シアター6 16:00回にて鑑賞。H-12。原作未読

京都市内で紳士服のテーラーを営む曽根俊也(星野源)が偶然に見つけた父の遺品。その中にあった手帳には、1980年代半ばに起きた菓子メーカーのギンガと萬堂事件に関わる内容が記されており、カセットテープには犯人グループからの指示に使われた音声が録音されていたのだが、その声は幼い時の俊也のものであった。
一方、新聞記者の阿久津英士(小栗旬)もギンガ萬堂事件についての企画記事に駆り出され、既に時効となっている事件の真相を追求する事になる。二人が交錯した先にあった事件の真実とは・・・







昭和の終盤に起き“劇場型犯罪”と言われたグリコ・森永事件をモチーフにフィクションとして描かれた本作。

主要となる人物や犯行グループ含め登場人物がとても多いですが、わかりやすくまとめてられており、おいてきぼりになる事がなかったのが好印象。
140分ほどの上映時間ですがダレる事無く、特に中盤で主演の小栗旬、星野源が加わったあたりからはあっという間に感じました。



曽根俊也が偶然に見つけてしまったテープの音声内容が昭和史に残る大事件に関わるもの。そしてその声の主は自分自身だった。幼少期の頃ゆえ、記憶には無い。果たして誰がこの声を録音したのか?

そりゃ自分の家からそんなものが出てきたら驚愕ですよね。もしかしたら自分の親や、親戚が犯人の一人だったかもしれない。
俊也は気になって調べてしまうが、既に時効を迎えた過去の事件であり自身が知らないうちに巻き込まれていたとはいえ、犯行に使われたテープの声が自分のものである以上、罪の意識から逃れられないという罪悪感を抱えることに。
真実は気になるものの、全てを知る事の恐怖というジレンマ。

そして犯行には同様に少女と男児の声が使用されたものが他にあり、それがこの物語を牽引していく事となります。


前半は事件の概要を含め外堀を固めていき、後半は巻き込まれた人たちのドラマとして描かれているように思いました。ミステリー、サスペンスの部類ではありますが、謎解き感はそこまで感じずヒューマンドラマに近い印象。かつ謎解き部分は再現ドキュメンタリーに近いかも。

派手な見せ場もなく、比較的淡々としていて意外な展開なも少ないので、そういった映画を期待する人には肩透かしかもしれないです。


特に本作では「フィクションです」とはいいながらも、グリコ・森永事件をかなり忠実になぞっており、事件内容はそのもの。当該事件に興味を持って少し調べたりした人には既に知られている説の一つでもあるので大きな驚きが生まれない。

事件以降に生まれた人たちが鑑賞しても、事件に関する不気味さや意外さが伝わりにくいだろうな、、、と感じたのが少し残念な部分でした。キツネ目の男の似顔絵はいつ見ても不気味だけど。



でも個人的に高評価となった点は、脚本と映像の見せ方の良さ。
小栗旬による取材シーンが多いのですが、意外とダレることなくテンポよく映されていたと感じます。また、終盤にロンドンと日本でのそれぞれの登場人物のやりとりを、同じようなカットで被せて映す手法があるのですが、ベタだけどそういうのが大好きです。
(大阪や京都など、見慣れた風景が多かったのもプラス!笑)

あとは主演二人である小栗旬と星野源がめちゃめちゃ良かったから。

事件の真相を追う記者役、阿久津英士を演じた小栗旬は円熟味がマシマシのマシでした。終始安心して観ていられる安定感。10年後にさらにどんな役者になっているかが楽しみ。

そしてもう一人の主演である、“罪の声を背負った者の一人”を演じた曽根俊也役の星野源。んもう大好き!笑 京都弁もそんなに違和感なかったのが流石というか。終盤に娘を抱きしめるシーンは必見です。



史実ミステリーを交えつつ、巻き込まれた人物たちにフォーカスしたドラマとして、重厚で面白かったです。


[2020-164]
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