シュトルム凸映画鑑賞記録用改め

ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ 完全版のシュトルム凸映画鑑賞記録用改めのレビュー・感想・評価

4.2
しばらく映画お休みして、小説読んでました。
話題沸騰中の中華SF劉慈欣の「三体」に、ヒューゴー・ネビュラ・世界幻想文学大賞史上初三冠受賞者のケン・リュウの第2短編集「母の記憶に」、このミス他四冠の今村昌弘の「屍人荘の殺人」と続編「魔眼の匣の殺人」。どれも素晴らしく、久々にSFやミステリを堪能した。屍人荘は12月に映画公開が決まってるが、三体もケン・リュウ作品もいずれ映画になるだろう。映画ファンも読んでおいて損はないと思った。閑話休題。

さて、そんな至福の読書三昧から映画モードに復帰するなら、こちらも匹敵する作品が望ましいが、長尺の本作に思い切って飛び込んでみて、大正解だった。
デ・ニーロ演じるユダヤ系移民のヌードルズが、犯罪を繰り返す幼少期に巡り会った親友マックスたちと悪の階梯を昇りながらも、友情を深めていく。
ジェニファー・コネリー演じる若き日のヒロイン、デボラが、子供ながらにハッとするほど美しく、ヌードルズは彼女にハッキリと惹かれていく。しかし大人になって彼女に再会したヌードルズは全てをぶち壊してしまう。ヤクザ者に人の愛し方は分からないのだ。
随所で流れるモリコーネの音楽がやはり素晴らしく、どんなに抑えようとしても抑えがたいノスタルジーを誘う。晩年の終盤シーンで、ヌードルズは、ある選択を突き付けられる。その時にモリコーネの音楽と共に脳裏に浮かぶのが、初めて出会った頃の若きマックスの姿だった。もう泣き出したくなるシーンですね。軽口のとおり、ヌードルズはマックスの「叔父さん」で、マックスはヌードルズの「ママ」だったのだ。
二度と戻ることのない少年時代からの男の友情が、大人になるにつれて、すれ違って行き、何となく消え失せそうで、それでいながら、最後まで切り捨て振り払う事が出来ず…という風情が良いのだ。
悲喜こもごもの人生で、こんな寂しい友の終焉を見たくはなかった、だからこそのラストシーン、阿片窟で束の間の幻覚に微睡むデ・ニーロの在りし日の笑顔なのであろうか。あの不可思議な笑顔が頭の中に張り付いて、心から離れない。