EUフィルムデーズ2019にて。
1950年ロシア統治下でスターリンの弾圧を受けるエストニア。
自由へのあらゆる思想を禁じられる人々の中に生まれる恐怖を、天真爛漫な少女レーロの視点で描いた伝記映画。
突然、母が反逆罪で連行されロシア人への憎しみを口にする家族達や保身の為に密告をする身近な人を目の当たりにして、口を滑らさないかハラハラするほど無邪気だったレーロの瞳が徐々に曇っていく。
子供が抱く未だ見ぬ世界や上の世代への憧れが、不条理な世界と大人への不信感で塗り潰されていく様がとても苦しかった。
娘の為に抑え続けた感情を娘を護る為に自身の中で爆発させた父親が、トラックを走り回るシーン、そんな些細な事が生きる喜びに繋がる悲しい時代の断片的な映画。
繊細な表情をアップで捉える緊張感と時折、差し込まれる景観の柔らかさが印象的だ。