このお母さんは父親の暴力から子ども達を守るだけでなく、子どもたちを父親殺しで殺人犯にさせない為に、自らが殺人犯になったのだと思う。特に次男。三兄妹の中で一番そうなりそうな気質を感じた。
しかしまあ、田中裕子さんは母性をこじらせた役を演じさせたら日本一なんじゃなかろうか。静かな狂気を演じるのも昔からお手の物だったしね。
昔々、新年の楽しみに『向田邦子新春シリーズ』というドラマがあってな。そこで加藤治子さん＆田中裕子さん、演出久世光彦さんの三位一体の古き良き日本の姿を映した芝居を魅せてくれてたものよ。そこでも田中裕子さんは女の様々な顔を魅せてくださった。あの芝居に年齢を重ねてさらなる磨きをかけて我々にどうだ！と差し出してくる静かな迫力が見どころ。
話の流れもなかなか面白くて、佐々木蔵之介さんの変わり方に不穏なものは感じていたものの、そこまでのもの抱えてたかと少し笑えた。やはり、人の道を一度でも外れるということは、それなりの代償を払わされるのよね。
それにしても、登場人物全員に想いがあるのが、とてもうまくまとまってて、とても良かった。白石和彌監督はお気に入りの監督。
