よっくる

TENET テネットのよっくるのネタバレレビュー・内容・結末

TENET テネット(2020年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

見る者を置き去りにして、緩急をつけつつもほぼトップスピードのままストーリー展開していくのが、さすがすぎて脱帽。わかりやすいものに慣れた人たちには難解と言われるのかなと思う。
確かに理論や構造はそこそこ理系じゃないと難しいし、ちゃんと理解するには複数回観ないとわからないと思うが、ゴールは至ってシンプルだし、これまでのノーラン作品を観てきた人ならついていける。
わりとこれまでの集大成というか、メメントやプレステージやインターステラーやインセプションをひとつにまとめたスパイSFって感じ。
でも、スパイ映画とかSF映画とか、そんな簡単にくくるのはもったいないほどにノーラン節が炸裂しているので、ジャンル分けするならばノーラン映画だろう。

私が不思議だったのは、パラドックスについての違和感をまったく感じさせないところ。
平行世界を同時に描き「つまりこういうことだったわけ」と言われても、普段なら「じゃあ、あの時のあれはおかしくない?」って思うのに、TENETでは全然思わないで終わる。なんだか全部納得できちゃう。
なんなら、私にも逆行できんじゃね?(謎)とすら思わせるほどの圧倒的説得力。いうなればブラフなんだけど、騙されるのが心地好いというか。ノーランの手中にいるのが、麻薬みたいに幸せで、パラドックスなんかどうでもよくなっちゃう。その心地好さのせいか、アドレナリンとオキシトシンが同時に出て終始ニヤニヤが止まらなかった。マスクしてて良かった。
演出も音響もすべてが理想的に調和していて、何一つ異質なものがないから為せる技なのかもしれない。スクリーンの存在を感じることもないほどストーリーに入り込めるから、こんなにも腑に落ちちゃうのかもしれない。

それにしても、こんだけ時をかけまくり過去にも未来にも干渉したら、歴史が変わると困る警察の1人や2人来そうなものだが、「歴史?知らねーよ、今から俺たちが作るんだよ」と言わんばかりの熱量が相変わらず素晴らしい。
歴史とは名もなき人々が生き残ろうと必死にもがく生き様の集まりであって、ただ20××年に○○がありました、みたいなもんじゃない。
そして、意志の強さこそが未来を変えていくんだ、って言われているようで胸が熱くなった。
簡単に諦めちゃだめね。

あと、予告で第三次世界大戦より悪いと言ってたのがどんなもんかと思えば!
でも、そういう自分勝手さや独占欲みたいな感情が先行してる感じ…嫌いじゃない。野心のある悪役じゃないのがとても良いの。

神のような存在に対してだろうと抗うのは他でもない自分自身。
自分が物語をつくる“主役”。
そして、持つべきものはニール(友だち)だった。
よっくる

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